カーエアコン用の新規冷媒として2013年までに欧州連合(EU)で導入が義務づけられている「R1234YF」の採用を、欧州自動車最大手の独フォルクスワーゲン(VW)が見送るもようだ。同社のフェルディナント・ピエヒ監査役会長は専門誌『Auto Bild』のインタビューで、「適切な冷媒は二酸化炭素(CO2)だ」と発言。CO2ベースの冷媒が投入可能になるまでは従来の冷媒である「R134a」を引き続き利用する考えを示した。高級車大手のダイムラーはR1234YFを採用しない方針を9月下旬に正式に表明している。
\EUでは地球温暖化防止策の一環として、これまでカーエアコン用冷媒として使われてきた代替フロン(R134aなど)に代わり、地球温暖化係数(GWP)150以下の冷媒を使用することが11年から義務化された(品不足を理由に12年末まで猶予されている)。ドイツの自動車メーカーはこれを受けて、米ハネウェルとデュポンが共同開発したR1234YFの採用を決めた。ハネウェルによると、R134aのGWPが1,430に達するのに対し、R1234YFはわずか4にとどまる。
\ただ、同冷媒は従来の不燃性冷媒と異なり、わずかながら燃焼性がある。R1234YFを開発したハネウェルとデュポンは安全性を強調し、技術監査機関TUeV Rheinlandも「従来品と変わらない」としているが、連邦環境庁(UBA)やドイツ環境支援協会(DUH)は、衝突事故などで引火する恐れがあるとして懸念を示す。
\ダイムラーは「規格に従って実験室で測定した値では安全性の確証が得られない」として、国際規格よりもはるかに厳しい独自の品質試験法を開発。「走行中の自動車同士の正面衝突事故で冷媒管が破損し、排ガスシステムの高温部品近くで冷媒が漏れだす」という状況を模して測定を行ったところ、R1234YFが高温のエンジンルーム内で引火性を持つことが確認されたという。
\CO2を用いる冷媒はコストが高く、現時点では実用化できない。このためVWは次善の策として従来の冷媒R134aを引き続き利用したい考えだ。
\独自動車工業会(VDA)のマティアス・ヴィスマン会長は『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に対し、「(ダイムラーの)試験結果を他のメーカーとともに検討し、今後の取り組みを協議する」意向を明らかにした。
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