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2012/11/14

ゲシェフトフューラーの豆知識

有給休暇中の解雇通知送達で最高裁判決

この記事の要約

雇用主からの特別解雇(Ausserordentliche Kuendigung)通知が送達されてから3週間以内に提訴しないと被用者は解雇の無効を請求する権利を喪失する――。これは解雇保護法(KSchG)4条第1項に記され […]

雇用主からの特別解雇(Ausserordentliche Kuendigung)通知が送達されてから3週間以内に提訴しないと被用者は解雇の無効を請求する権利を喪失する――。これは解雇保護法(KSchG)4条第1項に記されたルールである。ただし同5条には、やむを得ない事情がある場合は3週間の期限経過後も提訴の許可を裁判所に申請できると明記されている。では解雇通知の送達時に有給休暇を取得し自宅にいなかった場合は5条の特例が認められるのだろうか。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が3月に判決(訴訟番号:2 AZR 224/11)を下したのでここで取り上げてみる。

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裁判を起こしたのは被告病院に勤務していた手術室看護師。同看護師は2009年6月12日から27日にかけて有給休暇を取得し、国外でバカンスを過ごしていた。休暇期間中の25日、重大解雇の通知が原告の自宅に送達された。

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原告は休暇から戻った27日になって自宅の郵便受けに解雇通知が入っていることを知った。その後、弁護士を変更したなどの事情もあったため、裁判所に解雇無効の訴状を提出したのは送達から3週間以上経った7月17日になってしまった。原告はこれを受け、KSchG5条の規定に基づき、提訴の特別許可を裁判所に申請した。

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第1審と第2審は原告の訴えを棄却。最終審のBAGも下級審の判断を支持した。判決理由で裁判官は、解雇通知が原告宅の郵便受けに入った時点で送達が行われたことになるとの原則を指摘。被用者が有給休暇で不在であることをたとえ雇用主が知っていたとしてもこの原則は変わらないとの判断を示した。また、雇用主にはバカンス中の原告の滞在先が知らされておらず、雇用主が解雇通知を自宅に送付したことは民法典(BGB)242条に記された信義義務に反しないと言い渡した。

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