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2012/11/14

ゲシェフトフューラーの豆知識

操短の場合は有給休暇の削減可=欧州司法裁

この記事の要約

長期病休で有給休暇を消化できなかった被用者は、仕事に復帰した際に未消化の同休暇を取得できる。また、復帰せずに退職した場合は未消化分を金銭に換算して受け取ることができる。これは欧州連合(EU)法で定められた被用者の権利であ […]

長期病休で有給休暇を消化できなかった被用者は、仕事に復帰した際に未消化の同休暇を取得できる。また、復帰せずに退職した場合は未消化分を金銭に換算して受け取ることができる。これは欧州連合(EU)法で定められた被用者の権利である。では、企業の経営難で操短の対象となった被用者にもこの権利は保障されるのだろうか。この問題をめぐる係争で欧州司法裁判所(ECJ)が8日に判決(訴訟番号: C-229/11、C-230/11)を下したので、ここで取り上げてみる。

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裁判を起こしたのは自動車部品メーカーKaiser GmbHの元社員2人。同社はリーマンショックに伴う金融・経済危機を受けて2009年に業績が悪化したため、人員削減を計画。従業員代表の事業所委員会との間でリストラ計画を取り決めた。

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原告のハイマン氏とトルチン氏は当初、それぞれ09年6月末日、8月末日付で解雇されるはずだったが、同リストラ計画に基づき、解雇期日が1年延期された。1年間の雇用延長期間中は操短で勤務を全面的に免除され、労働局から操短手当を受給。雇用主も給与の支払い義務を全面免除された。

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原告2人は解雇後、2009年と2010年有給休暇を取得していないとして未消化分を金銭に換算して支払うようKaiserに要求。同社が支払いを拒否したため、パッサウ労働裁判所に提訴した。

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同労裁は、係争はEU法に関わる問題だとしてECJの判断を仰いだ。

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ECJが下した判決は、原告に有給休暇の取得権はなく、金銭に換算して受給することはできないというものだった。判決理由で裁判官は、操短で就労義務を全面免除された原告には余暇を過ごす時間が十分にあったと指摘。長期病休で有給休暇を取得できなかった被用者と同列に扱うことはできないとの判断を示した。

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■ポイント

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企業は操短を行う場合、労働時間の短縮分に比例して当該被用者の有給休暇を削減できる。

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