欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2012/11/21

ゲシェフトフューラーの豆知識

「捜査を受けたことはありますか」は違法な質問

この記事の要約

採用応募者に対して質問してもよい内容といけない内容がある。人格権の侵害や差別に当たるような質問がそれに当る。では、過去に検察や警察の捜査を受けたことがあるかどうかを尋ねることは許されるのだろうか。この問題をめぐる係争で最 […]

採用応募者に対して質問してもよい内容といけない内容がある。人格権の侵害や差別に当たるような質問がそれに当る。では、過去に検察や警察の捜査を受けたことがあるかどうかを尋ねることは許されるのだろうか。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が15日に判決(訴訟番号: 6 AZR 339/11)を下したので、ここで取り上げてみる。

\

裁判を起こしたのは公立学校の教員募集に応募した1961年生まれの男性。応募用紙には(1)犯罪歴の有無(2)現在、検察の捜査の対象となっているかどうか(3)過去3年以内に捜査の対象となったかどうか――を記入する欄があった。原告に対しては以前、複数の捜査が

\

行われており(3)が該当していたが、その事実を伏せて書類を提出し、2009年9月15日付で採用された。

\

翌月になって原告が過去に捜査を受けたことがあるとの匿名情報が雇用主の行政当局に寄せられた。これを受け同当局は検察に問い合わせを行い、匿名情報が正しいことを確認。原告は採用に際して虚偽の回答を行っていたとして解雇を通告した。

\

これに対し原告は、すでに終了した捜査について回答する義務はないと反論。解雇無効を求めて提訴した。

\

第1審と第2審は原告勝訴を言い渡し、最終審のBAGも下級審判決を支持した。判決理由で裁判官は、採用に際してすでに終了した捜査について質問することは憲法(基本法)で保障された「情報の自己決定権」の侵害に当たると指摘。善良な風俗に違反する法律行為を無効とする民法典138条1項の規定に基づき、解雇無効を言い渡した。

\