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2012/11/28

総合 - ドイツ経済ニュース

DBダイヤが今冬も混乱の恐れ

この記事の要約

ドイツ鉄道(DB)の冬季ダイヤに黒雲が立ち込めてきた。電機大手のシーメンスは21日、高速鉄道ICEの納期を遵守できないと発表。カナダの鉄道車両大手ボンバルディアも25日、ローカル線車両の納入が遅れることを明らかにした。D […]

ドイツ鉄道(DB)の冬季ダイヤに黒雲が立ち込めてきた。電機大手のシーメンスは21日、高速鉄道ICEの納期を遵守できないと発表。カナダの鉄道車両大手ボンバルディアも25日、ローカル線車両の納入が遅れることを明らかにした。DBの冬季運行体制は両社の納入を前提にしており、寒波などで車両の故障が相次ぐと、予備車両を投入できないケースが増える懸念がある。

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シーメンスはICE3をベースに開発した動力分散方式の高速鉄道車両「ヴェラロD」をDBの冬季ダイヤが始まる12月9日までに計8編成、納入する予定だったが、試運転の際に車両制御に問題が生じたため、守れなくなった。新たな納入時期は明らかにしていない。ドイツ鉄道は少なくとも2カ月は遅れるとみている。

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DBは4年前の2008年12月、ヴェラロDを計16編成、発注した。当初は納期を11年末としていたが、技術的な問題の発生を理由に何度も延期されてきた経緯がある。

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シーメンスはこれを受け、この問題をレッシャー社長自らが取り仕切る異例の体制を敷いて対応。今年9月の時点では12月初旬の納入を請け合っていた。

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DBに納入する車両の試運転は11月2日から5日にかけて実施された。メディア報道によると、その際に車両と線路の接触が何らかの理由で途絶えて自動列車停止装置が作動したほか、ソフトウエアの不具合でブレーキ作動が1秒遅れるトラブルが起きたという。時速250キロで走行していた場合、ブレーキ作動が1秒遅れると、車両はその間に70メートルも走行してしまう。

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監督機関の連邦鉄道監督庁(EBA)は事態を重く見て、ヴェラロDの認可を見送り、シーメンスに問題解決を命じた。

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DBは納期の大幅な遅れを受けてすでに約6,000万ユーロの損害賠償をシーメンスに請求している。今回の件で請求額はさらに増える見通しだ。

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冬季の運行は吹雪や寒波などでトラブルが起こりやすいため、DBはヴェラロDを予備車両として利用する方針だった。だが、納期延長を受けて十分な量の予備車両を確保できないことから、ダイヤが大幅に乱れかねないと懸念している。少なくとも帰省客が増えるクリスマスに合わせて臨時列車を運行する余地は狭まったもようだ。

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過去2シーズンは寒波や大雪で運休や運行の遅れが多発した経緯がある。予備車両を拡充できればそうした事態を回避できることから、シーメンスに対するDBの不信感は強まっている。

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認可基準が厳格化

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ボンバルディアも冬季ダイヤのスタートに合わせてローカル線車両「タレント2」を22編成、納入する予定だった。だが、監督官庁のEBAが認可を見送ったため、納入できなくなった格好だ。『ビルト・アム・ゾンターク』紙によると、EBAはボンバルディアが提出したデータに矛盾があると指摘。同社に釈明を要求しているという。

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ボンバルディアはDBからタレント2を計320編成、受注した。そのうち119編成はすでに納入しており、EBAの今回の決定に納得がいかないようだ。納入済みの車両で問題は起きていないという。

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シーメンスとボンバルディアの関係者が各種メディアに語ったところによると、EBAの認可基準は年を追うごとに厳しくなっており、これが納期遅れの一因となっている。

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EBAは1998年にドイツ北部のエシェデで起きたICE事故をきっかけに認可に慎重になったとされる。同事故では101人が死亡、88人が重傷を負っており、ドイツの鉄道技術に対する信頼感は大幅に低下した。

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事故は車輪が破損したために起きた。ICEではその後も車軸の破損、ドアの脱落、エアコンの故障などのトラブルが起きており、EBAは神経を尖らせている。

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