人材派遣業界の雲行きが怪しくなってきた。サービス市場調査会社のLuenendonkが実施した業界アンケート調査によると、2012年の業界売上高は前年比3.9%増の215億ユーロとなり、成長率は前年の17.6%から大幅に鈍化する見込み。賃金協定導入など派遣社員の待遇改善の動きが背景にあり、13年には売り上げが縮小に転じる見通しだ(グラフ参照)。2割の減収を見込む企業もある。4日付『ハンデルスブラット』紙が独自入手した資料をもとに報じた。
\ドイツでは03年に人材派遣規制が大幅に緩和され、それまで最大6カ月に制限されていた派遣期間の延長が可能になった。これにより市場は右肩上がりで成長。先の金融・経済危機による景気低迷で09年に大きく落ち込んだものの、10年には再び増加へと転じた。
\規制緩和によって雇用情勢の改善や労働市場の柔軟化という目標は達成されたものの、安価な労働力として派遣社員を利用する企業が目立ってきたことから、労働組合や政府は格差是正に向けた取り組みを展開。先月には金属・化学業界で派遣社員の勤続期間に応じて手当てを上乗せする新たな賃金協定が発効した。他業界でも今後数カ月内に同様のシステムが導入される見通しだ。
\売上ベースで最大の派遣先である自動車業界では、労組の圧力を受け派遣社員の比率を引き下げる動きが加速しており、自動車最大手フォルクスワーゲン(VW)は11月30日、従業員に占める派遣社員の割合を5%以下に抑える方針を表明した。
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