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2012/12/19

経済産業情報

連続繊維強化・熱可塑性樹脂複合材、重合から成形まで1台で

この記事の要約

切れ目のない長い繊維(連続繊維)で強化した熱可塑性樹脂複合材をこれまでより簡単に生産する技術を、フラウンホーファー化学技術研究所(ICT)と墺樹脂成形機メーカー、Engel Austriaの産学協同チームが開発した。複数 […]

切れ目のない長い繊維(連続繊維)で強化した熱可塑性樹脂複合材をこれまでより簡単に生産する技術を、フラウンホーファー化学技術研究所(ICT)と墺樹脂成形機メーカー、Engel Austriaの産学協同チームが開発した。複数の装置を通す必要があった従来の工程が1台の機械でこなせるうえ、これまで短繊維を使った複合材でしかできなかった射出成型が連続繊維でも実現。軽量化に取り組む自動車産業にとって大きな恩恵になりそうだ。

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連続繊維強化・熱可塑性複合樹脂は、連続繊維を強化繊維に、熱可塑性樹脂をマトリクス材に使用した複合材料。長い繊維を用いると衝撃特性が著しく向上するため、自動車の構造材として従来使われていた鋼材に比べ大幅な軽量化とコストダウンが可能になる。ただ、熱可塑性樹脂は粘度が非常に高く、連続繊維の中への含浸が困難なため、射出成型による製法はこれまで実用化されていなかった。

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ICTとEngelの研究チームはこうした事情を踏まえ、非常に粘度の低いモノマーをマトリクス材として連続繊維に含浸させたうえで、射出成型機内で重合反応させて「その場で」ポリマーに化合する手法を開発した。製造工程は全て自動化されており、工程に応じて装置から装置に移動させる必要はない。

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ICTとEngelが作成した射出成型機械「Engel e-victory 120」は、まだ試作品ながらほぼ市販モデルに近い仕上がりとなっており、自動車部品メーカー大手ZF Friedrichshafen向けに、連続ガラス繊維強化ポリアミド製のブレーキペダル支持材を成形する機械1台を試験用に提供したという。

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同製品は独強化プラスチック工業連合(AVK)が選定する今年のイノベーション賞の製法部門賞を受賞した。

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