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2012/12/19

ゲシェフトフューラーの豆知識

事業所委からの意見聴取、被委任者の場合は委任状添付が必要か?

この記事の要約

解雇権の被委任者が委任状を添付せずに解雇通知を送付した場合、解雇通告を受けた被用者がその受け入れを拒否すると、解雇は無効となる。これは委任状のない法律行為(ここでは解雇通告)に関する民法典(BGB)174条第1文の規定に […]

解雇権の被委任者が委任状を添付せずに解雇通知を送付した場合、解雇通告を受けた被用者がその受け入れを拒否すると、解雇は無効となる。これは委任状のない法律行為(ここでは解雇通告)に関する民法典(BGB)174条第1文の規定に基づいたルールである。

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一方、事業所体制法(BetrVG)102条1項には、従業員を解雇する際は事業所委員会(Betriebsrat)に理由を説明してその意見を聴取しなければならないと記されている。では、解雇に関する事業所委の意見を文書で尋ねるに当たって解雇権の被委任者が同文書に委任状を添付していない場合、事業所委はBGB174条第1文の規定を援用して文書(意見聴取)の受け入れを拒否できるのだろうか。この問題に関する係争で、最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が13日に判決(訴訟番号:6 AZR 348/11)を下したので、ここで取り上げてみる。

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裁判を起こしたのはギリシャ系航空会社のドイツ拠点に勤務していた女性社員。同社に対しては2009年10月にギリシャ法に基づく特別清算手続きが開始され、清算人はドイツ拠点の閉鎖と全社員の解雇を決定。清算人の委任を受けた弁護士Gは12月15日付の文書で解雇に関する事業所委の意見を問い合わせた。同委は文書に委任状が添付されていなかったことを根拠に、文書の受け入れを拒否したが、Gは同29日付の文書で、全社員に翌年3月末日付の解雇を通告した。

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原告社員はGが事業所委に充てた文書に委任状が添付されていなかったことを根拠に解雇は無効だとして、提訴した。

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原告は第1審で敗訴したものの、第2審で勝訴。最終審のBAGは2審判決を破棄し、解雇は有効との再逆転判決を下した。判決理由で裁判官は、事業所委への意見聴取(BetrVG102条1項)は口頭で行うことも認められていると指摘。BGB174条第1文の規定を事業所委への意見聴取に適用することはBetrVG102条1項の趣旨に反するとの判断を示した。

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