欧州では第2次世界大戦後に社会の世俗化が進み、無宗教の市民が増えている。だが、信仰心の篤い人も決して少なくはなく、十字架のペンダントを身につけている人もいる。では、そうした宗教的な意味を持つ行為を勤務中に行うことは認められるのだろうか。この問題をめぐる係争で、欧州人権裁判所(ECHR)が15日に興味深い判決を下した。英国女性が起こした裁判だが、ECHRの判決はドイツを含む欧州評議会加盟国で有効なため、ここで取り上げてみる。
\裁判は航空会社の地上職員と看護婦が英国を相手取ってそれぞれ起こしたもので、損害賠償を請求していた。
\原告の地上職員は2005年までは十字架のペンダントを外部から見えないようにしていたが、06年になって外に出して身につけるようになった。これは勤務先のドレスコードに抵触することから、雇用主は禁止を命令。さらに原告に無給休暇を命じた。
\一方、看護婦は制服がVネックに変更されたことで十字架のペンダントが他人に見えるようになった。これを受けて雇用主が装着しないよう命令したため、係争となった。
\両原告は英国の裁判所でともに敗訴。これを不服としてECHRに提訴した。
\ECHRの裁判官は航空会社の地上職員の訴訟では、ペンダント装着を禁じる合理的な理由がないとして、原告勝訴を言い渡した。一方、看護婦の訴訟では、十字架で患者が怪我をする恐れがあるとする雇用主の主張を認め、装着禁止は妥当だとの判断を示した。
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