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2013/1/30

ゲシェフトフューラーの豆知識

雇用主が社員に残留要請、その数カ月後に解雇は信義義務違反か

この記事の要約

他社への転職を予定している社員を引きとめた雇用主がそれから間もなく当該社員に解雇通告することは民法典242条に定められた信義義務に反するだろうか。この問題をめぐる係争でケルン州労働裁判所が昨年9月に判決(訴訟番号:4 S […]

他社への転職を予定している社員を引きとめた雇用主がそれから間もなく当該社員に解雇通告することは民法典242条に定められた信義義務に反するだろうか。この問題をめぐる係争でケルン州労働裁判所が昨年9月に判決(訴訟番号:4 Sa 569/12)を下したので、ここで取り上げてみる。

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裁判を起こしたのは、2011年3月1日付でF社に転職する予定だった被告企業の社員。その事実を知った被告企業の経営者は、原告はわが社で最も優秀な社員で、絶対に必要な人材だと本人に伝えたうえで、3月から月給を500ユーロ引き上げることを提案。転職を思いとどまるよう要請した。原告はこれを受け入れ残留したが、その5カ月後に経営上の理由で整理解雇を通告されたため、これを不当として提訴した。

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原告は第1審のアーヘン労働裁判所で敗訴。第2審のケルン州労裁も1審判決を支持した。判決理由で裁判官はまず、被告企業は経営規模が小さく、被用者を解雇から保護することを目的とする解雇保護法(KSchG)の規定が適用されないと言い渡した。そのうえで、原告の転職を思いとどまらせた被告の行為はスカウト活動だと指摘。原告は被告から残留要請を受けた際に(給与引き上げのほか)一定期間は解雇できないように取り決めることもできたとして、解雇は信義義務に反しないとの判断を示した。最高裁への上告は認めなかった。

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