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2013/2/13

経済産業情報

臨床データ使った広告、「正しく引用」していなければ不可

この記事の要約

臨床試験データを使用した医薬品の広告をめぐる係争で、最高裁の連邦司法裁判所(BGH)は6日、学術的に正しい方法で得られたデータであっても、因果関係や条件などデータの妥当性に制約があることを明示しなければ、広告に使用するこ […]

臨床試験データを使用した医薬品の広告をめぐる係争で、最高裁の連邦司法裁判所(BGH)は6日、学術的に正しい方法で得られたデータであっても、因果関係や条件などデータの妥当性に制約があることを明示しなければ、広告に使用することは認められないとの判断を示した。都合の良い部分だけを表示すると誤解を与えかねず、薬事法で定められた「引用の正当性」に反するとした。(訴訟番号:I ZR 62/11)

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争いの対象となったのはデンマークのノヴォ・ノルディスクの糖尿病治療薬だ。同社は自社製品の薬効成分であるインスリンデテミルには競合の仏サノフィ・アベンシス製品の成分(インスリングラルギン)より患者の体重増加を抑える効果がある、とカタログで宣伝。ただ、参照した臨床研究データは脚注で表記するにとどめていた。これに対しサノフィは「引用元の研究は学術的に不適切な点がある」と批判、紛らわしい表示にあたるとして広告取り下げを求め提訴した。前審のベルリン高等裁判所は「引用された研究は販売認可申請で提出された書類の一部であり、学術的根拠がある」として原告敗訴を言い渡したが、サノフィはこれを不服として上告していた。

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BGHの裁判官は、インスリンデテミルの体重増加抑制効果について、ノヴォ・ノルディスクが患者全員に効果があるわけではないことを認識していたにもかかわらず、その点を明記していなかったことは、引用の正当性の原則に反すると指摘した。その一方で、体重増加抑制効果そのものは新薬審査当局によって確認されており、比較広告は認められると判断。サノフィが反証データを提示できない限り、広告取り下げは請求できないと言い渡した。

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なお、処方薬広告の受け手は薬剤師や医師などの専門家に限られており、消費者の目に触れる新聞などでの広告は禁止されている。

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