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2013/2/13

ゲシェフトフューラーの豆知識

人事管理ソフトは共同決定権の対象

この記事の要約

企業に複数の事業所がある場合、従業員の代表機関である事業所委員会(Betreibsrat)が事業所ごとに設置されるほか、個々の事業所委員会の代表からなる全体事業所委員会(Gesamtbetriebsrat)も設置される。 […]

企業に複数の事業所がある場合、従業員の代表機関である事業所委員会(Betreibsrat)が事業所ごとに設置されるほか、個々の事業所委員会の代表からなる全体事業所委員会(Gesamtbetriebsrat)も設置される。さらに複数の企業からなるコンツェルンの場合はその上にコンツェルン事業所委員会(Konzernbetriebsrat。以下:KBR)という機関を設けることもできる。このKBRの共同決定権(Mitbestimmungsrecht)をめぐる裁判で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が昨年9月に決定(訴訟番号:1 ABR 45/11)を下したのでここで取り上げてみる。

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裁判を起こしたのは複数の出版社を傘下に抱えるV社のKBR。同社ではSAP社のERP(企業資源計画)ソフトウエアを利用し、同ERPを利用して人事管理を行っていた。

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V社とKBRは2008年になって、SAP ERPの人事管理ソフトの利用規則をめぐって意見の相違が生じたため調停所(Einigungsstelle)を設置。労使同数の代表と中立の委員長からなる同調停所は、KBRには同利用規則を使用者側と共同で決定する権限がないとの結論を出した。

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V社とKBRはまた、グループの人事管理業務を傘下企業に移管した2010年にも同じ問題で調停所を設置。調停所は08年と同様の結論を出した。

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KBRは調停所の両結論を不服として提訴。最高裁のBAGは原告勝訴を言い渡した。決定理由で裁判官はまず、SAP ERPの人事管理ソフトは事業所体制法(BetrVG)87条1項6が規定する「被用者の行動と仕事を管理する道具」にあたり、事業所委員会はその導入と利用に際して共同決定権を持つと指摘。そのうえで、グループ内の個々の事業所および個々の企業を超える案件に関してはKBRが共同決定権を持つとしたBetrVG58条1項第1文の規定に従い、原告KBRには人事管理ソフトの利用規則について共同決定権を持つとの判断を示した。

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