ドイツのアルトマイヤー連邦環境相とレスラー連邦経済相は14日、再生可能エネルギー法(EEG)の改正原案を発表した。助成に伴う消費者などの負担が急速に高まったことを受けた措置で、再可エネ電力の買い取り価格引き下げと、企業に認められている助成負担軽減の適用基準引き上げを柱としている。今後は連邦政府と州政府の代表からなる作業部会が同原案をたたき台にして3月21日までに改正案の作成を目指す。政府は連邦議会(下院)選挙前の8月1日付で新ルールを施行したい考えだ。
\再可エネ電力の買い取りに伴う一般需要家の負担額は今年から1キロワット時(kWh)当たり5.277セントとなり、昨年の同3.592ユーロから47%上昇した。政府の「エネルギー転換政策」を背景に太陽光や風力発電設備を新設する動きが急増し、再可エネ電力の助成総額が膨らんでいるためで、年間消費量3,500キロワット時の標準世帯では年負担額が昨年の125ユーロから今年は185ユーロへと跳ね上がる。
\負担が今後も急速に増え続けると、家計や経済に悪影響をもたらすため、政府は負担抑制策を検討。今回EEG改正原案を発表した。需要家の負担額を2014年は現行の1kWh当たり5.277セントに据え置き、15年以降も上昇率を年最大2.5%に抑制するという内容。
\これに伴い再可エネ発電の助成総額を12億ユーロ削減。電力消費量の多い企業に認めている同負担の軽減措置についても適用基準を厳格化し、これら企業の負担額を計7億ユーロ増やす。
\再可エネ電力の助成額削減策としては◇8月1日以降に稼働する太陽光発電以外の施設の助成額を稼働後5カ月間は電力の時価相当額(4セント強)に抑制する◇6カ月目以降については陸上風力発電の助成額を現在の1kWh当たり9セントから8セントに引き下げ、最大1セントを上乗せするルールも廃止する◇洋上風力発電とバイオマス発電についても助成額を4%削減する◇既存の発電施設に対しても助成額を1年間に限り一律1.5%下げる◇太陽光発電については現行ルールを今後も適用する――などを盛り込んだ。
\再可エネ助成負担の軽減措置に関しては◇厳しい国際競争にさらされている業界以外の企業には適用しない◇適用を受ける企業が支払う再可エネ助成負担金を引き上げる――などが盛り込まれている。
\ \エネルギー政策への信頼低下も
\ \政府案に対しては風力発電業界から強い反発が出ている。エネルギー転換政策で重要な柱と位置づけられているにもかかわらず、太陽光発電業界に比べ大きなしわ寄せを受けるためだ。
\批判の対象は大きく分けて2つある。1つは既存施設の助成額を1.5%引き下げるとの方針、もう1つは新設施設の助成額引き下げだ。
\『フランクフルター・アルゲマイネ』紙が銀行業界への取材をもとに報じたところによると、1.5%の助成削減は採算上カバーできる範囲に収まっている。ただ、政府による助成額の一方的な引き下げはドイツのエネルギー政策に対する国外投資家の信頼を著しく傷つけるもので、国外投資家は今後、リスクプレミアムを要求するようになるという。
\新設施設の助成額引き下げは風力の弱い内陸部の風力発電プロジェクトに大きな影を落とす。バイエルンやバーデン・ヴュルテンベルク、東部諸州では事業の採算が取れなくなるというのが業界関係者や地元政治家の一致した見方だ。
\このほか、融資計画がほぼまとまったプロジェクトについては収益見通しの悪化を受けて再交渉を余儀なくされるという問題もある。
\政府原案に対しては野党のほか、州の環境相からも懸念が出ており、作業部会で内容が大幅に変更されたり合意が成立しない恐れもある。ただ、現行ルールが続くと来年以降も一般需要家の負担額が大幅に増える公算が高いため、何らかの妥協案をまとめ上げる可能性もある。
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