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2013/5/15

経済産業情報

理系専門職の人材難が深刻に

この記事の要約

財界系シンクタンクのドイツ経済研究所(IW)は6日、理系専門職の人材養成・雇用などに関する春季調査報告書を発表した。それによると、数学、IT、自然科学、工学のいわゆる「MINT」系専門職の今年3月時点の空きポスト数は12 […]

財界系シンクタンクのドイツ経済研究所(IW)は6日、理系専門職の人材養成・雇用などに関する春季調査報告書を発表した。それによると、数学、IT、自然科学、工学のいわゆる「MINT」系専門職の今年3月時点の空きポスト数は12万2,800人に達した。12年通期平均(18万2,000人)に比べ不足感はやや弱まったものの、景気変動による一時的な現象に過ぎないという。少子高齢化による生産年齢人口の減少などを受けて今後は労働力の需給がひっ迫するため、高齢職員の定年退職に伴う分だけでも不足数は12~20年の8年間で計60万人に上る。先進技術開発に向けたスタッフ需要拡大も含めると140万人に達する見通しという。

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MINT系の学科に進学する大学生の数は2000年の11万2,000人から2012年には19万人へと増加した。卒業後の就職展望の良さを受けて理系人気が高まったことに加え、◇兵役義務の廃止◇ギムナジウムの就学期間を従来の9年から8年に短縮する制度が導入された――ことで一時的に大学入学人口が増加したという事情も背景にある。

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MINT系の職業に従事する大卒者の数は2010年末で230万人に達し、05年に比べ29万5,000人増加した。中学・高校卒業後に職業学校・企業で訓練を受けたMINT労働力は同期間に48万3,700人増の765万8,500人へと拡大している。

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ただ、こうした就業人口の増加にもかかわらず、高齢社員の定年に伴う労働力不足を相殺できない。13~20年に定年退職するMINT労働力は180万人と予想される一方、同じ期間に学校を卒業し新たな戦力となる若者は130万人に過ぎないためだ。

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IWのミヒャエル・ヒュートナー所長は人材不足に対処するため◇子育てなどで休職中の女性スタッフの復帰を促進し、仕事と家庭生活の両立を支援する◇大学や訓練学校の中退者を増やさない◇能力不足の人材に対する教育支援◇高い技能を持つ移民の獲得を強化する――などの取り組みが必要だと指摘した。

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