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2013/12/11

総合 - ドイツ経済ニュース

人件費上昇率がEU平均上回る

この記事の要約

ドイツの人件費の上昇率が拡大している。経済の安定と企業の人材不足を背景に賃金が上昇していることが背景にある。17日に次期政権を樹立予定のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)は社会保障費の増加に […]

ドイツの人件費の上昇率が拡大している。経済の安定と企業の人材不足を背景に賃金が上昇していることが背景にある。17日に次期政権を樹立予定のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)は社会保障費の増加につながる方針を打ち出しているため、人件費は今後も上昇する見通しだ。ただ、企業のコスト負担が増えすぎると構造改革を通して獲得した国際競争力がそがれる懸念があり、経済界には警戒感が広がっている。

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労働組合系のマクロ経済・景気研究所(IMK)がこのほど発表した欧州連合(EU)加盟国の人件費に関する統計によると、ドイツ(民間セクター)の2012年の上昇率(前年比)は2.8%で、EUとユーロ圏の平均(ともに2.2%)を上回った(下の表1を参照)。13年上半期も2.8%増加したという。

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2000年~12年の上昇率は年平均1.9%で、ギリシャに次いで2番目に低かった(次ページの表2を参照)。00年から金融・経済危機が発生する08年までの平均がEU加盟国で最も低い1.8%にとどまったことが強く影響した格好だ。

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だが、ドイツ経済はその後、欧州経済が低迷するなかで一人勝ちの様相を呈しており、08年~12年の人件費上昇率は2.2%に拡大した。IMKはこれを、長年低迷してきた賃金や内需の「正常化」を意味すると肯定的に評価する。

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これに対し、財界系シンクタンクIW経済研究所は、ドイツの12年の人件費が国際競争に直接さらされる製造業部門ではEUで5番目に高いことを指摘(表1参照)。人件費が今後、生産性の伸びを上回る勢いで増加する可能性に警戒感を示した。

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ドイツの経済競争力が現在高い背景には、2000年代に行われた構造改革(アジェンダ2010)で、企業の税・社会保障負担が軽減されたことがある。例えば労使が折半する失業保険の料率は06年までの6.5%から07年に4.2%に低下。09年には2.8%まで引き下げられた。公的年金と公的健康保険の分野でも改革が行われており、こうした措置が「ドイツ経済の復活」の大きな要因となった。

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競争力の回復に伴い賃金をある程度、引き上げることは適切であり、これについては経済界に異論がない。だが、人件費が急速に増えると、構造改革で獲得した高い競争力が失われる恐れがある。特に公的年金分野で保険料の大幅上昇につながる政策をCDU/CSUとSPDが打ち出したことは大きな懸念材料となっている。

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