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2015/11/4

ゲシェフトフューラーの豆知識

契約に労働時間の規定なし、残業手当の請求権はあるか

この記事の要約

労働契約に労働時間の明確な規定がなければ、どこまでが正規の労働時間でどこからが残業かの区別がつかない。では、そのような契約を結んだ被用者には残業手当を請求する権利がないのだろうか。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁 […]

労働契約に労働時間の明確な規定がなければ、どこまでが正規の労働時間でどこからが残業かの区別がつかない。では、そのような契約を結んだ被用者には残業手当を請求する権利がないのだろうか。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が3月に判決(訴訟番号:5 AZR 602/13)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判はバス会社の運転手が同社を相手取って起こしたもの。同運転手は2011年5月1日からの1年契約で被告企業に採用された。労働契約には「フルタイム勤務」と書かれていたものの、具体的な労働時間は記されていなかった。

原告は週労働時間を40時間、休憩時間を1日につき1時間とみなし、それを超える分は残業だと主張。この前提に基づいて計算した残業手当の支給を要求したが、雇用主は与えられた業務の遂行に要した時間が労働時間に当たるとして受け入れを拒否したため、裁判となった。

原告は1審で敗訴したものの、2審で勝訴。最終審のBAGも2審判決を支持した。判決理由でBAGの裁判官は、労働契約に具体的な時間の明記なしにフルタイム勤務と記されている場合、被用者は◇労働時間法(ArbZG)3条の規定に基づき1日の労働時間が8時間を超えない◇週5日勤務――と考えてよいと指摘。これに基づくと労働時間は週40時間未満となるため、週40時間勤務を前提に残業代を請求したことは妥当だとの判断を示した。

■ ポイント

民法典(BGB)612条1項には、事情から判断して給与の支払いなしに業務が行われることが考えられない場合は、給与の支払いについて暗黙の合意が成立したとみなされる、と記されており、労働契約に残業手当の規定がなくても、被用者はこれを根拠に同手当の支払いを請求できる

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