独金融監督庁(BaFin)は7日、カナダ銀メイプル・フィナンシャル・グループ傘下の独メイプル・バンクに対し業務の一時停止を命令したと発表した。脱税の追徴課税で引当金を計上すると、メイプル・バンクは債務超過に陥る恐れがあるため事業の売却や支払い、顧客預金の出し入れを禁止した。ドイツの金融機関がBaFinから業務の一時停止を命じられるのは3年ぶり。
メイプル・バンクは「権利確定日」の時点で保有していた株式には配当が付くが、同確定日以降の「権利落ち日」に取得した株式には配当が付かない「カム・エクス(Cum-Ex)」というルールを悪用した取引で2006年から10年にかけて脱税していた疑いが持たれており、昨年9月には当局の立ち入り調査を受けた。メディア報道によると、同行と顧客の脱税額は計4億5,000万ユーロで、自己資本3億ユーロ弱を大幅に上回る。
メイプル・バンクは欧州と北米で有価証券・デリバティブ取引を行う小規模銀行で、4日時点の総資産は50億ユーロ弱、顧客預金は約26億ユーロにとどまった。このため今回の業務停止命令で金融システムが不安定になる恐れはない。
顧客の大半は機関投資家が占める。預金については1人当たり10万ユーロまでをドイツ銀行補償機構(EdB)、それを超える分については同5,980万ユーロを上限にドイツ銀行協会(BdB)の預金保険基金がそれぞれ保護する。
メイプル・バンクはスポーツ車大手のポルシェが08年、複雑な金融取引を利用して自動車大手フォルクスワーゲン(VW)を買収しようとした際に支援を行たことで知られる。