カーニバルの最中に同僚に暴行、即時解雇は不当か

同僚を暴行した被用者を雇用主は原則的に即時解雇できる。これについてはこのコラムですでに何度か取り上げてきた。では、暴行がカーニバルのお祭りの最中に行われた場合も即時解雇処分は妥当なのだろうか。この問題に関する係争でデュッセルドルフ州労働裁判所が昨年12月に判決(訴訟番号:13 Sa 957/15)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は被告企業で調達業務に従事する男性社員が起こしたもの。同社では2015年2月12日、「女性のカーニバル(Weiberfastnacht)」のパーティーが会社の敷地内で行われた。同社員は米国のギャングとして有名なアル・カポネに扮していた。

パーティーの最中、はさみを持った女性社員2人が同社員に近づき、ネクタイを切ろうとした。デュッセルドルフやケルンには女性のカーニバルの当日に女性が男性のネクタイを切る習慣があるためである。

同社員がこれを拒否したところ、様子を見ていた男性の同僚(道化師の格好をしていた)からとがめられ口論に発展。原告はこの同僚の顔面を殴ったうえで、グラスに入っていたビールを顔にぶちかけた。さらに、空になったビールグラスで殴ったため、同僚の額にガラスの破片が刺さり、出血。医師が出動し、手当を行った。

事態を重くみた被告企業は事業所委員会(Betriebsrat)と障害者統合局(Integrationsamt)の承認を得たうえで、3月13日付の即時解雇を通告した。障害者統合局の承認を得たのは原告は障害者だったため。

これに対し原告は、重病で以前に睾丸摘出手術を受けてから不安障害を患っていると主張。はさみを持った女性社員が近づいてきたことでパニックに陥ったとして、同僚にケガを負わして時点で責任能力はなく解雇は不当だと訴えた。

1審のデュッセルドルフ労働裁判所は原告の訴えを棄却。2審のデュッセルドルフ州労裁の裁判官も現場を撮影したビデオ画像を見たうえで1審判決を支持した。カーニバルの最中であっても即時解雇は妥当だとしている。最高裁への上告は認めなかった。

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