ドイツには就業免除(Freistellung)という制度がある。これは一定の期間、勤務を文字通り免除するというもので、従業員が申請するケースと、雇用主から言い出すケースの2種類がある。従業員が申請したケースでは通常、就業免除期間中に給与が支給されず、雇用主からのケースでは支給される。
では有給の就業免除期間中に被用者が病気となった場合、被用者は病気にかかっていた期間を病休扱いとしその分を労働時間口座に蓄える権利を持つのだろうか。この問題をめぐる係争でマインツ州労働裁判所が昨年11月に判決(訴訟番号:5 Sa 342/15)を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判は被告企業で働く機械工が起こしたもの。被告は2014年9月10日付の文書で同機械工に対し解雇予告期間を設置した通常解雇を通告した。解雇日は同年末となっていた。解雇通告の送達日から解雇日までの期間は就業義務を有給で免除した。
原告の機械工はこれを受けて、解雇無効の確認を求める裁判を起こした。
被告はその後、解雇処分を撤回したものの、就業免除期間中の11月13日から12月5日にかけて原告が病気となり医師から就業不能証明書(通称ゲルベシャイン)が発行されたことの取り扱いをめぐって対立。原告はこれを病休扱いとして労働時間口座に66.75時間を積み立てる権利を主張し、被告は拒否した。
1審のトリーア労働裁判所は原告のこの訴えを退け、2審のマインツ州労裁も1審の判断を支持した。判決理由で同州労裁の裁判官は、就業免除期間中に病気になっても被用者にはその相殺措置を雇用主に請求する権利がないとした最高裁判決(訴訟番号:6 AZR 374/02)を指摘した。また、有給休暇中に病気となった場合はその期間を有給休暇に算入しないとした有給休暇法(BUrlG)9条の規定を就業免除に類推適用すること(病気にかかっていた期間を就業免除期間から除外すること)もできないとの判断を示した。
最高裁への上告は認めなかった。