独米のIoT団体が提携、システムの相互運用性や規格分野で

「モノのインターネット(IoT)」の実現に向けた経済団体である米国主導の「インダストリアル・インターネット・コンソーシアム(IIC)」とドイツの「プラットフォーム・インダストリー4.0」は2日、スイスのチューリヒで開催した会合で提携合意した。両団体が競合するとIoTの普及の障害となることから、両団体に加盟する独ボッシュ、SAPが主導して同会合を実現した。

インダストリー4.0(I4.0)は製品開発、製造、物流、顧客関係のネットワーク化を情報通信技術(ICT)の活用を通して推進する国家的なプロジェクトで、独機械・設備産業の競争力を一段と高め経済力を向上させることを狙っている。2011年のハノーバー国際産業見本市で提唱され、12年に始動した。

プラットフォーム・インダストリー4.0はI4.0構想の具体化・実現に向けて13年4月に立ち上げられた。当初は独情報通信業界連盟(Bitkom)とドイツ機械工業連盟(VDMA)、独電気電子工業会(ZVEI)の3業界団体が担ってきたが、産業界だけでは同構想の実現に必要な幅広い課題に対応できないことから昨年、官学労も参加するすそ野の広い組織へと発展解消した(団体名は継承)。

IICは米企業AT&T、シスコ、ゼネラル・エレクトリック(GE)、IBM、インテルが14年春に設立した。ドイツでは当初、I4.0に対する「米国の出遅れた反応」として問題視されず、産業技術の分野でドイツの脅威になるとは考えられていなかった。

だが、米国のほか日本や中国の企業も加入するようになると、独企業はこれを警戒するようになった。製造業が中心のI4.0に比べIICは対象範囲が広いうえ、ICT分野では米国企業の方が競争力が高いためだ。標準規格をめぐる競争では多数派の企業に支持されるものが優位に立つため、I4.0は世界から孤立して取り残されかねないという懸念も大きい。独電機大手シーメンスのケーザー社長は「世界から孤立したソリューションは独製造業の利益にならない」として警鐘を鳴らしてきた。

今回の両団体の提携はこうした事情を背景に実現した。具体的には◇プラットフォーム・インダストリー4.0のリファレンス・アーキテクチャーである「RAMI」とIICサイドの同「IIRA」にシステムの相互運用性を持たせる◇規格作りで協働する◇テスト環境を共通化する――を取り決めた。

プラットフォーム・インダストリー4.0の役員であるシーメンスのルスヴルム取締役は、今回の提携により「世界標準実現への道が開けた」と指摘。ドイツの輸出産業にとって大きな意味を持つとの見解を示した。またIICの役員であるスタン・スナイダー氏は、生産分野に重点を置くプラットフォーム・インダストリー4.0と、医療・輸送・エネルギー・スマートシティ向けのIoTソフトに大きな焦点を当てるIICは補完性が高いと述べ、提携の相乗効果に期待感を示した。

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