新入社員を採用する際に雇用主は通常、試用期間を設定する。6カ月とすることが多い。6カ月以内であれば理由のいかんを問わず雇用契約を解除できるからである。ではこのルールを障害者にそのまま適用することはできるのだろうか。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が21日に判決(訴訟番号:8 AZR 402/14)を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判はバーデン・ヴュルテンベルク州刑事庁(LKA)から解雇通告を受けた重度の障害者が雇用主である同州を相手取って起こしたもの。
原告は2012年10月1日付で同LKAに採用された。試用期間は6カ月となっていた。
原告は障害がネックとなり、仕事を十分にこなすことができなかったため、LKAの長官は試用期間が終了する13年3月末付けで雇用関係を打ち切る意向を13年2月11日の面接で伝達。3月8日付の文書で通達した。
これに対し原告は、障害者が勤務を遂行するうえでの壁を取り除き雇用関係を可能な限り維持できるように努めることを雇用主に義務づけた社会法典(SGB)第Ⅸ編84条1項の規定を指摘。同条項に定められた手続きを取らずに雇用関係を打ち切ることは一般平等待遇法(AGG)で定められた違法な差別に当たるとして、解雇無効の確認とAGG15条2項に基づく慰謝料の支払いを求めて提訴した。
原告は1審と2審で敗訴し、最終審のBAGも下級審判決を支持した。判決理由でBAGの裁判官は、採用後6カ月以内であれば、正当な理由がなくても被用者を解雇できるとした解雇保護法(KSchG)1条1項の規定を指摘。被告バーデン・ヴュルテンベルク州には同6カ月の期間中にSGB第Ⅸ編84条1項に基づく手続きを取る義務はなかったとの判断を示した。