最低賃金に有給休暇手当などを含めるのは不当か

ドイツでは全国・全業界一律の法定最低賃金が2015年1月に導入された。1時間当たり8.5ユーロと定められている。では、この8.5ユーロのなかに有給休暇手当などを含めることは法的に認められるのだろうか、それとも違法なのだろうか。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が先月25日に判決(訴訟番号:5 AZR 135/16)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判はカフェテリアの店員が雇用主を相手取って起こしたもの。同社では法定最低賃金が導入される直前の14年12月、それまで年に一度、支給していた有給休暇手当(5月)とクリスマス手当(11月)を年明け以降は毎月の給与に上乗せして支払うことで、雇用主と事業所委員会(Betriebsrat)が合意した。これにより1時間当たりの賃金が8.5ユーロを下回らないようにしたわけである。

これに伴いは原告には15年1月から毎月、月給1,391.36ユーロに両手当の12分の1の額を上乗せした1,507.30ユーロが支給されるようになった。

これに対し原告は、有給休暇・クリスマス手当を最低賃金に算入することは違法だとして、両手当を除いたベースの賃金が1時間当たり8.5ユーロの法定ラインに達するようにすることを要求。提訴した。

原告は下級審で敗訴し、最終審のBAGも敗訴を言い渡した。判決理由でBAGの裁判官は、雇用主は被用者が実際に働いた時間に対して対価を支払わなければならないと指摘したうえで、被告雇用主は有給休暇・クリスマス手当を12分の1に分けて毎月支給することで、この義務を果たしたとの判断を示した。

裁判官はまた、労働への対価以外の目的で支給する手当を最低賃金に算入することは違法だとの判断を示した。例えばクリスマス手当であっても、労働の対価でなく勤続に対する感謝の記として支給する場合は同手当を最低賃金に算入できないことになる。

原告のケースではクリスマス手当と有給休暇手当がともに労働への対価の一部であったため、裁判官は両手当を最低賃金に算入することを妥当としたわけである。

上部へスクロール