大量解雇の情報開示義務で最高裁判決

雇用主は大規模な解雇(Massenentlassung)を実施する前に、連邦雇用庁(BA)に計画を通知しなければならない。これは解雇保護法(KSchG)17条1項に記されたルールである。どの程度の人数が大規模な解雇に該当するかも明記されており、従業員数が21人~59人の企業では6人以上となっている。

同2項には大規模解雇に関する情報を従業員の代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)に適切な時期に文書で開示しなければならないとも記されている。開示しなければならない情報は解雇の理由、解雇の対象となる被用者の数とその職業グループ、解雇の実施時期、選別基準、解雇手当の計算基準などだ。このKSchG17条2項をめぐる係争で、最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が9日に判決(訴訟番号:6 AZR 405/15)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は経営破たんしたメーカーの管財人を相手取って同社の工員が起こしたもの。

同管財人は従業員を全員解雇し、会社を清算することを決め、事業所委に情報を開示した。その際、解雇の対象となる職業グループについては情報を伝えなかった。従業員を全員解雇するため、対象となる職業グループに関する情報を伝えるのは無意味と考えたのである。

事業所委は解雇手当などに関する管財人との交渉が終了した2013年12月23日に、KSchG17条2項で定められた解雇に関する情報を漏れなく受け取ったことを表明した。

管財人はこれを受けてBAに解雇計画を通知。原告工員に対しては12月27日付の文書で、14年3月末付けの解雇を通告した。

これに対し原告は、解雇の対象となる職業グループの情報を管財人が事業所委に開示しなかったことはKSchG17条2項の規定に反しており、解雇は無効だと主張。その確認を求めて提訴した。

1審と2審は原告敗訴を言い渡し、最終審のBAGでも判断は覆らなかった。判決理由でBAGの裁判官は、KSchG17条2項で定められた解雇に関する情報を漏れなく受け取ったと事業所委が表明したことで、情報開示の要件不充足(解雇の対象となる職業グループに関する情報を同委に伝えなかったこと)は解消されたとの判断を示した。

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