イラン政府は20日、対イラン輸出保険の引き受けでドイツが過去に被った損失を補償した。同損失はドイツ企業の対イラン取引を復活させるうえで大きな障害となっていたことから、対イラン貿易や直接投資の本格的な復活に向けて大きく前進した格好だ。
ドイツ政府はリスクの大きい輸出や国外プロジェクトを行う自国企業に対し、民間企業ユーラーヘルメスを通して貿易保険(ヘルメス貿易保険)を提供している。対イランでは過去の保険で約5億ユーロの損失が出ていた。
イラン側がこの損失の穴埋めを行わない限り、ドイツは対イラン取引で貿易保険を提供できず、独企業も対イラン取引に踏み込めないという事情があった。このため今回の補償支払いの意義は大きく、独銀行協会(BdB)のミヒャエル・ケマー専務理事は「イランとの経済・金融関係の段階的な改善の重要な礎石だ」と歓迎の意を示した。
ただ、同専務理事はその一方で、イランの銀行、顧客との取引再開には依然として法的な不確実性があり、その問題が解消されない限りドイツの銀行はイラン事業を再開できないとの立場も明らかにした。
欧米の対イラン経済制裁は核合意履行を受けてその大部分が1月に解除された。だが、資金洗浄など一部の分野で米国の制裁が続いていることから、銀行はなおもイラン事業に踏み出せない状況だ。独経済省はこの問題の解決に向けて現在、米当局と協議を行っている。