EVに電力需給の調整効果、VWなどが実証試験で確認

電気自動車(EV)には電力の需給を調整する効果があることが、自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)やフラウンホーファー風力エネルギー・エネルギーシステム研究所(IWES)などが共同実施した研究プロジェクトで確認された。再生可能エネルギー由来の電力の増加に伴う電力需給ギャップの拡大の緩和役としてEVが将来、活用される可能性が出てきた。

ドイツでは再生エネの利用を加速する「エネルギー転換政策」を受けて風力や太陽光発電が急速に増えている。ただ、これらの電力は風の強さと日照量に発電量が大きく左右されるため、利用が増えれば増えるほど電力の需給バランスを取るのが難しくなる。

この問題の解決策をさぐるためにVWとIWES、SMAソーラー(電機)、リヒトブルック(エネルギー/IT)の4者は2012年6月から15年末にかけて、EVの電力需給緩和効果を確認するためのプロジェクト「INEES」を実施した。同プロジェクトではVWのEV「イー・アップ!」20台を利用。またSMAソーラーは特別開発の双方向直流充電ステーション40台を生産し、リヒトブリックは制御用ソフトを担当した。

同実用テストの結果、必要に応じてEVから送配電網に電力を供給したり送配電網から電力の供給を受けてもEVの利用に基本的に支障が出ないことが確認された。EVの電池容量の一部を電力需給緩和のために開放したテスト参加者に報奨金を出すルールを取り入れたことがプラスに働いたという。

ただ、EVを電力需給の調整に利用しても現在の枠組み条件下では採算が合わないというのが、テスト結果を分析したIWESの結論で、IWESは法制整備、さらなる技術開発、エネルギーシステムの転換が必要だと指摘した。

ドイツ政府はINEESを、電気駆動車の分野で特に重要なプロジェクトと位置づける「エレクトロモビリティ灯台プロジェクト(Leuchtturmprojekt der Elektromobilitaet)」に選定しており、助成金を交付した。

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