独取引所が合併承認のハードル引き下げ

英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)決定がドイツ取引所とロンドン証券取引所の合併計画に大きな影を落としている。同計画はブレグジットが起きないことを前提にしていたためで、ドイツ取引所は11日、株主による合併承認のハードルを引き下げた。

両取引所は5月、合併計画の是非をめぐる株主の決定を7月に行うことを明らかにした。ブレグジットの是非を問う国民投票(6月23日)の結果を踏まえて株主が判断できるよう配慮してのことだ。ドイツ取引所のケンゲーター社長はその際、ブレグジットはあり得ないと強調。英国はEUにとどまり合併計画に支障は出ないとの見方を示していたが、ブレグジットが確実になったことで、それに見合った対応を迫られている。

ロンドン証券取引所は4日の臨時株主総会で合併計画を承認した。賛成は99.9%に達した。

ドイツ取引所では株主総会が行われず、株主は合併受け入れの意志を表明することになっている。当初の計画では75%が12日までに賛成すれば承認となるはずだった。

だが同取引所は11日、有価証券法21条に定められた権利を行使して株主による承認のハードルを75%から60%に引き下げた。このため同条の規定により、株主の受け入れ表明期限も2週間延長の26日へと変更された。

背景には、ブレグジット決定を受けて合併計画に懐疑的な株主が増え、75%ラインの確保が難しくなったことがある。

両取引所は合併後の新会社の出資比率をドイツ取引所側54.4%、ロンドン証取側45.6%とすることで合意した。だが、EU離脱の国民投票結果を受けて英ポンドの為替相場が大幅に下落。ロンドン証取側の出資比率を引き下げずに合併することに不満を持つ株主がドイツ取引所側で増えている。

ブレグジット決定を受けて、EUの規制が届かなくなる英国に本社を置くことに対しドイツやEUの政治家から強い懸念が出ていることも新たに浮上した大きな問題だ。計画を変更しない限り独・EU当局の承認を得られないとみられるためで、合併後の本社所在地をロンドンに一本化するという計画は変更されるもよう。各種のメディア報道によると、ドイツ取引所のケンゲーター社長は新会社の本社をロンドンとフランクフルトの2カ所に設置する意向を株主に示し、理解を求めているという。同社は5日のプレスリリースで「規制上の要件をすべて満たす」考えを示した。

『南ドイツ新聞』によると、正式発表した合併計画を変更することは法律上、認められない。このため、新会社の本社をロンドンに一本化する計画を現時点で修正することはできない。ロンドンとフランクフルトの二本社体制を実現するためには(1)その旨を確約した協定を認可当局と結ぶ(2)当局の承認を得て合併する(3)新会社の最高意思決定機関で(二本社体制について)75%超の承認を得る――という手順を踏まなければならないという。このため当局は(1)の協定が新会社の最高意思決定機関で承認されることを前提に合併を承認することになる。