処方薬の通販禁止など求める声、定額販売ルールのEU法違反確定で

オランダのネット薬局ドックモリスがドイツで行う処方薬の割引販売は処方薬の患者負担額(薬局での販売価格)を固定するドイツの薬事法に違反するとして、経済界の自己管理組織である不正競争撲滅センターが提訴している係争で、欧州連合(EU)の欧州司法裁判所(ECJ)は19日、同ルールは域内での物の自由移動を定めたEU法に抵触するとして、処方薬の価格を自由に設定することを国外の通販会社に認める判決を下した。ドイツの薬局は薬事法の規定により固定価格での販売を引き続き義務づけられることから、競争上不利な立場に置かれることになる。不正競争撲滅センターはそうした事態を回避しなければならないとして、政府に法改正を要求した。

ドックモリスは2009年、ドイツパーキンソン病協会と協定を結び、パーキンソン病の処方薬を会員患者に固定価格よりも安く販売することを取り決めた。同センターはこれを不当として提訴。1審で勝訴した。

一方、2審のデュッセルドルフ高等裁判所は、処方薬の販売価格固定ルールがEUの物の自由移動原則に抵触していないかどうかの判断をECJに仰いだ。

ECJにはドイツ政府が同ルールの趣旨を説明。販売価格の自由を認めると、過当競争が発生して僻地などで薬局が廃業に追い込まれ、国内の全地域に医薬品を安定供給することができなくなるとの見解を表明した。

ECJの裁判官は今回の判決で、市民の健康と生命を守るために物の自由な移動を制限することは原則的に認められるとしながらも、ドイツの処方薬固定価格ルールは健康・生命を守るという目的に適していないとして、EU法に違反するとの判断を示した。実店舗型の薬局は患者の対面相談などネット薬局にはない強みを持っていると指摘。また、薬局が少ない僻地であれば販売価格を高く設定することができるとして、処方薬価格の自由競争で医薬品の全国的な安定供給が損なわれることはないとの判断を示した。

同判決を受けてドイツ国内では、(1)処方薬の販売価格固定ルールを廃止する、あるいは(2)処方薬の通販を禁止する――べきだとの要求が出てきた。ECJは2003年の判決で、一般医薬品(大衆薬)の通販禁止はEU法に違反するとしたものの、処方薬については健康安全上の理由から通販禁止が可能だとの見解を示唆しており、(2)はEU法に抵触しないとみられている。

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