アウディがライン生産を廃止、多品種少量生産に見合った方式へ

高級車大手のアウディが生産ラインを廃止する考えだ。モデルバリエーションや装備が車両ごとに異なるようになり、ライン生産のデメリットが目立ってきたためで、同社はデジタル技術を活用した新しい生産システムを構築。生産性を20%引き上げる。フベルト・ヴァルトゥル取締役(生産・物流担当)が明らかにした。

ラインを用いた従来型の生産システムでは正しい部品が作業員の手元になかったり、取り付け作業に手間取ったりすると生産ラインが停止するという問題がある。高級車では同じモデルでも車両によって部品がそれぞれ異なることから、そうした問題が特に発生しやすい。ヴァルトゥル取締役は、生産ラインは同一の製品を大量に生産する時代の産物だと指摘。自動車の多品種少量生産には適していないとの見方を示した。旗艦クラスの高級車では一台として同じ車両はなく、例えばBMWの「7シリーズ」には1,000万種類のバリエーションがある。

アウディは生産ラインを廃止し、代わりに工場内に計200の組立場を設置。生産中の車両はロボットによって無人走行の輸送用車両に載せられ、待ち時間が最も少ない組立場に自動輸送される。スーパーマーケットで買い物客が最も空いているレジを選ぶのと同じ原理だ。部品も自動輸送される。

工場内を走行する輸送車両やロボットは中央コンピューターで一括制御される。インゴルシュタット工場では緊急時に部品をドローン(無人機)で輸送するテストも行った。

高齢労働者や障害を持つ労働者がこれまでよりも働きやすくなるのも生産ライン廃止のメリットだ。生産ラインでは一定時間間隔でラインが動くため、誰かが作業時間をオーバーすると生産ラインが停止。作業員のストレス要因となっていた。

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