自動車部品大手グラマーに会社乗っ取りの危機

自動車シート大手の独グラマーが会社乗っ取りの危機に直面している。計20%超の株式を持つ投資会社2社がハルトムート・ミュラー社長の解任と、株主代表の監査役の大幅な入れ替えを要求しているのだ。同投資2社はともにボスニアの事業家一族ハスター家の傘下企業。ハスター家傘下のサプライヤー、プリベント・グループは昨年、自動車大手フォルクスワーゲン(VW)への供給拒否でVWの生産ラインを停止させたことで一躍有名になっており、グラマーの取引先は憂慮の目で推移を見守っている。

ハスター家傘下の独投資会社ハログ(HALOG)はグラマー株を10.22%、同カスカーデ・インターナショナル・インベストメンツは10.001%保有し、それぞれ筆頭株主、第2位株主となっている。両投資会社は、グラマーは売上高が増えているものの、利益率は低下しているとして現経営陣を批判。社長解任と、6人いる株主側監査役のうち5人をプリベント関係者と入れ替えることを要求している。

これに対しグラマーは、同社の業績は競合よりも良好で、株価もそれを反映して上昇していると反論。また、「主要顧客はグラマーの株主構成とハスター家の株式保有の推移をきわめて正確に見守っている。主要顧客はまた、グラマーの既存機関の独立と、これまで成果を上げてきた(グラマーの)事業・戦略的な経営方針を必要不可欠とみていることを、わが社に対し強調した」と指摘。ハスター家が同社を“乗っ取る”ことを顧客の自動車メーカーは望んでいないとの見方を示した。主要顧客BMWの広報担当者は『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に「わが社は(グラマーの)推移を批判的かつ憂慮の念をもって注視している」と述べた。

プリベントは昨夏、VWに対しシートカバーと差動歯車枠の納入を拒否し、VWを一時、生産停止と操短に追い込んだ。VWはこれを受けプリベントの要求を甘受したものの、将来的にはこれら部品の調達先を複数化し、プリベントとの取引を打ち切る可能性がある。プリベントは高級車大手のダイムラーとも裁判で争っており、長期的には多くの顧客を失うとみられている。

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