後妻の遺族年金受給権で最高裁判決

遺族年金の受給権者を被用者の「現在の妻」に制限する労使の契約は不当な差別に当たり無効なのだろうか。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が2月21日の判決(訴訟番号:3 AZR 297/15)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。

裁判は経営破たんして清算された造船会社(A社)に1986年10月まで勤務していた社員が同社の企業年金を管理する年金保障協会(PSVaG)を相手取って起こしたもの。A社は83年7月1日付で発効した原告との契約で、原告の死後「現在の妻」に終身の遺族年金を支給することを確約した。原告は2006年4月に再婚したことから、後妻に遺族年金の受給権があることの確認をPSVaGに要請。PSVaGが後妻の受給権を否認したことから、これを不当として提訴した。

1審と2審は原告の訴えを棄却し、最終審のBAGも同様の判断を示した。判決理由でBAGの裁判官はまず、現行法に照らして判断すると後妻に遺族年金の受給権を認めない労使契約は違法だと指摘。その根拠となる法律として、普通約款の作成使用者(ここではA社)が信義義務に反して契約相手(原告)に不利な取り決めを行った場合、その取り決めは無効となるとした民法典(BGB)307条1項の規定を挙げた。

裁判官はそのうえで、この規定が労使関係の取り決めに適用されるようになったのは2002年1月1日付の法改正以降だとして、原告がA社と遺族年金の取り決めを行った時点ではそうしたルールがなかったことを指摘した。

ただ、01年末までに締結された遺族年金の労使契約に関しては現行法を踏まえてその不備を補う解釈が必要だとして、労使関係が継続している時点で迎えた後妻であれば、後妻に遺族年金の受給権が発生するとの見解を示した。原告の場合は、後妻との結婚が06年でA社との労使関係の終了(86年10月)後であることから、原告の後妻には遺族年金の受給権がないと言い渡した。

上部へスクロール