ドイツ連邦議会(下院)は9日、政府提出の医薬品供給強化法案を一部修正のうえで可決した。同法案は画期的な新薬の開発意欲を削がないようにするとともに、健康保険の薬剤費支出を抑制することを狙ったもので、年内に施行される。
医薬品市場には近年、米ギリアド・サイエンシズのC型肝炎治療薬「ソバルディ」など効果の高い製品が登場している。ただ、こうした製品は価格は極めて高く、ソバルディは1錠700ユーロに上る。治療に要する費用は10万ユーロを超え、健保の薬剤費支出を押し上げている。
政府はこうした現状を踏まえ、市場投入後1年以内の特許薬であっても売上高が2億5,000万ユーロを超えた場合は、薬価決定に向けた健保との交渉をメーカーに義務づけるルールを同法案に盛り込んだ(現行法では健保との薬価交渉の対象となる製品が上市後1年を経過したものに限られている)。
だが、製薬業界からの批判を受けて与党は同ルールを記した条文を撤回。代わりに健保と製薬会社が交渉で取り決めた特許薬(上市後1年を経た製品)の価格を非公開扱いにするとした条文を削除し、同価格が今後も公開されるようにした。薬価が公開されると高額な製品には値下げ圧力がかかりやすいほか、他国が薬価制定の参考にできるという事情があり、製薬会社にとっては好ましくないという事情がある。
これ以外の点では法案に変更はなく、公的健保の給付上限額(Festbetrag)が決まっていない医薬品の価格を2009年8月1日時点の水準に据え置く時限ルールは、失効期限を17年末から22年末に延長することが決まった。ただし18年からは物価上昇分が上乗せされる。
また、既存の抗生物質の効用を評価し薬価を定める際に、耐性菌がすでに出現しているかどうか、また出現している場合はその深刻度を反映させるようにするルールも導入される。これにより抗生物質の無駄な投与が減少すると期待されている。
さらに、公的健保が医薬品を割引価格で調達するために実施する公募入札の対象からワクチンが除外されることも決定した。ワクチンの供給不足が発生しないようにすることがこの措置の狙い。このルールは抗がん剤にも適用される。
このほか、上市後間もない特許薬の薬効評価を行う委員会が設立されることも確定した。これにより医師は新製品の効用に関する情報を簡単に入手できるようになる。同委員会は医師、心理療法士、病院、健康保険の代表で構成される。