社用車を私的に利用することは雇用主からの非金銭的な便宜とみなされ、課税所得に加算される。これは所得税法(EStG)に基づくルールで、加算方法は(1)車両のカタログ記載価格の1%を毎月の課税所得に上乗せする(2)運行記録をつけ、私的目的で走行した距離の分だけを上乗せする――の2つがある。(2)は手間がかかり面倒なため、大抵の人は(1)の「1%ルール」を選ぶ。
では、社用車の利用に伴う非金銭的な便宜の換算額から燃料代を必要経費として控除することは可能なのだろうか。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦財務裁判所(BFH)が昨年11月の判決(訴訟番号:VI R 2/15)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。
裁判は外回り勤務の被用者が税務署を相手取って起こしたもの。同被用者はカタログ価格5万2,300ユーロの社用車を貸与されていた。燃料代は同被用者が負担し、その他の費用はすべて雇用主が引き受ける取り決めとなっていた。同取り決めに伴う非金銭的な便宜の換算額は年およそ6,300ユーロだった。
原告は2012年度の納税申告に当たって、非金銭的な便宜の換算額から燃料代およそ5,600ユーロを差し引いた額(700ユーロ)が同社用車の課税所得に当たると主張した。これに対し被告税務署は、1%ルールで納税する場合は燃料費を必要経費として税控除の対象とすることはできないとしたBFHの過去の判決を根拠に受け入れを拒否したため、裁判となった。
BFHは今回の判決で原告勝訴を言い渡し、過去の判決に修正を加えた。判決理由で裁判官は、被用者が社用車を利用する際に燃料代などで自腹を切れば社用車利用のメリットはその分だけ低下するとの判断を示した。
BFHは別の裁判で、燃料代などの控除額は非金銭的な便宜の換算額を超えないとの判断も示している。