家庭での不法労働が蔓延、規模1400億ユーロに

財界系シンクタンクのドイツ経済研究所(IW)は先ごろ不法労働に関する報告書を発表した。それによると、清掃などのサービスを利用する家庭のうち75%が税務当局に申告を行っていないことがわかった。2016年には最大300万人が無申告で家庭サービスを提供しており、その総額は年間1,400億ユーロに上った。不法労働が蔓延する背景には、所得を抑えることで課税を回避したい労働者側の事情や、配偶者の健康保険料の支払い免除制度がある。

IWによると、2015年に掃除やベビーシッターなどのサービスを利用した家庭は約360万世帯に上った。そのうち課税や保険料の支払いを免除される月額所得450ユーロ以内のいわゆる「ミニ・ジョブ」該当者によるサービスとして申告した家庭は約30万世帯。保険料を支払った家庭は4万7,000世帯にとどまった。

同研究所のエンステ氏は不法労働が蔓延する理由は、必ずしもサービスの依頼主の側にあるわけではなく、サービスを提供する労働者の側にもあると考える。そうした労働者は複数の仕事を抱えていることが多く、月額の所得が合計で450ユーロを上回った場合に「ミニ・ジョブ」の扱いを受けることができなくなることを恐れ申告しない傾向がみられるという。健康保険については仕事を持つ伴侶の保険によってカバーされることから問題にならないという。他の理由としてはその労働者が不法滞在者である場合がある。

同報告書は、現状では労働者1人当たり約8,000ユーロの税収と1万8,000ユーロの社会保険料収入が失われており、国庫に109億ユーロ~286億ユーロの損失が発生していると指摘する。仮にこうした不法労働が合法的な労働市場で行われるようになった場合には、最大100万人分のフルタイムの仕事が生まれる可能性があるという。

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