ゲルベシャイン提出の社内ルールで最高裁が判断

病気で4日以上、仕事を休む場合、被用者は通称“ゲルベシャイン”と呼ばれる医師の「労働不能証明書(Arbeitsunfähigkeitsbescheinigung=AU)」を遅くとも病休4日目に雇用主に提出しなければならない。これは「祝日および病欠時の給与支払いに関する法律(EntgFG)」5条1項第2文に記されたルールである。同第3文にはさらに、雇用主は病休4日目よりも前(病休3日目以内)にAUの提出を要求することもできると記されている。

この第3文のルールを個々の被用者でなく、被用者全体あるいは特定の被用者グループに適用する場合は、事業所委員会(Betriebsrat)の承認が必要となる。「事業所の秩序および被用者の行動・振る舞いに関する問題」は雇用主と事業所委が共同で決定しなければならないとの規定が、事業所体制法(BetrVG)87条1項1にあるからである。

では、国内に複数の事業拠点を持つ企業が病休3日目以内のAU提出義務を導入する場合、企業はすべての事業拠点の事業所委員会からそれぞれ承認を取らなければならないのだろうか。それとも各事業所委の代表で構成される「全体事業所委員会(Gesamtbetriebsrat)」の承認を得るだけでよいのだろうか。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が昨年8月の決定(訴訟番号:1 ABR 43/14)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。

裁判は国内に計72の事業所を持つ物流会社が起こしたもの。同社は2008年1月、「一般労働秩序に関する全体事業所合意」という取り決めを全体事業所委員会との間で結んだ。同合意の9条3項には◇被用者は原則としてAUを病休初日に雇用主に提出する◇また、遅くとも3日目には提出しなければならない◇提出先は人事課ないし直属の上司(あるいは雇用主が任命した代理人)とする――というルールがあった。

これに対し事業所Dの事業所委員会は、このルールとは異なる同事業所独自のAU提出義務ルールを導入したいと考え異議を唱えた。原告物流会社はこの要求を退ける目的で裁判を起こした。

BAGが下した決定は原告敗訴だった。決定理由でBAGの裁判官は、被用者全体あるいは特定の被用者グループに関わる問題を事業所委員会と共同で決定する場合は、被用者から選挙で直接選ばれた各事業所の事業所委員会が原則的に交渉相手になると指摘。全体事業所委員会と協議してルールを取り決めることができるのは、交渉を全体事業所委員会に委ねることをすべての事業所委員会が承認した場合に限られるとの判断を示した。

同社の全体事業所委員会はこうした委任手続きを経ずに全体事業所合意の締結交渉を雇用主側と行っていた。このためBAGは同合意9条3項のAU提出ルールを無効とした。

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