右手を斜め前にまっすぐ挙げて挨拶するナチ式敬礼で同僚を侮蔑する行為は即時解雇に値する――。ハンブルク労働裁判所が昨年11月の判決(訴訟番号:12 Ca 348/15)でそんな判断を示したので、ここで取り上げてみる。
裁判はトルコ系の救急車運転手が勤務先企業を相手取って起こしたもの。同運転手は2015年10月27日の従業員集会で、従業員の代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)の委員長と口論を行った。その際、事業所委員長の目の前でナチ式敬礼の姿勢を取ったうえで、「お前はハイルだ。このナチ野郎が」と口汚くののしった。この場合の「ハイル」はナチ式敬礼時に述べる「ハイル・ヒトラー(ヒトラー万歳)」のハイルを意味する。
これを受け同社はこの運転手に即時解雇を通告した。これに対し原告は、トルコ人である自身がナチの思想を持つはずはなく、事業所委員長に対する行為と発言は単に侮蔑のために行ったに過ぎないとして、解雇撤回訴訟を起こしたものの敗訴した。
判決理由でハンブルク労裁の裁判官は、問題となった原告の仕草はナチのシンボルを意味すると指摘。そうしたシンボルが職場で甘受されてはならないと言い渡した。また、原告の侮蔑発言はナチのシンボルを増強するものだと指摘した。
裁判官は上訴を認めなかった。