ボルボ・カーズ―ディーゼルエンジンの新規開発停止へ―

スウェーデンの高級車大手ボルボ・カーズがディーゼルエンジンの新規開発を停止する。今後予想される排ガス規制の強化を踏まえると、採算が取れないとみられるためで、中長期的には経営資源を電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)に絞り込む考えだ。ホーカン・サムエルソン社長が『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』紙に明らかにした。有力自動車メーカーでディーゼル車からの撤退方針を打ち出したのは同社が初めて。

ディーゼル車はガソリン車に比べて燃費が良く、走行距離当たりの二酸化炭素(CO2)排出量が少ない。このため欧州では温暖化防止に寄与する車両として高く評価されてきた。

だが、独フォルクスワーゲン(VW)グループのディーゼル車排ガス不正問題が発覚した2015年秋以降、風向きが急速に悪くなっている。

VWは健康に有害な窒素酸化物(NOx)の排出量を違法なソフトウエアを使って操作。台上試験では規制値を満たすものの、実際の走行ではこれを大幅に上回る車両を販売してきた。その後に各国が実施した調査で他のメーカーのディーゼル車でも排ガス値が台上試験と実際の走行とで大きく異なっていること明らかになっており、ディーゼル車の規制強化は避けられない見通しだ。

ドイツでは基礎自治体の全国組織である都市会議が、多くの大都市でNOxの許容値を順守できないのは、自動車メーカーが実際走行の数値を大幅に下回る排ガス値を公式値として提示してきたことが原因だと批判。自動車大手ダイムラーの地元シュツットガルトでは来年から、ディーゼル車の市内乗り入れが制限される恐れがある。ディーゼル車は需要減少が止まらない状況だ。

ボルボはこうした動向を踏まえて、ディーゼルエンジンの新規開発を停止する。サムエルソン社長は、排ガス浄化装置の化学処理で現行水準よりも低いNOx排出量を実現することは可能だが、コストが大幅に膨らむため利幅の大きい大型高級車でも採算が合わなくなると理由を説明した。

13年に市場投入した現行のディーゼルエンジンについては改良を加え、欧州の次期排ガス規制「ユーロ6c」に対応する方針だが、その後の改良はコスト上の理由から行わない意向。サムエルソン社長は同エンジンをいつまで使用するかについて明言を避けているものの、FAZ紙は「恐らく2023年までと考えてよいだろう」と報じた。

同社はすべての車両をEVないしPHVとする方針で、19年には同社初のEVを市場投入する。大型車となるもようだ。

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