ドイツ政府が付加価値税(VAT)引き下げの可能性を検討したもようだ。日曜版『ヴェルト』紙が報じたもので、経常黒字削減の効果があるかどうかを吟味した。
ドイツは巨額の経常黒字を毎年、計上しており、昨年は対国内総生産(GDP)比率が8.6%に達した。これに対し国外からは経常黒字の削減要求が強まっており、米国家通商会議のピーター・ナバロ委員長は1月、ドイツは大幅なユーロ安を利用して巨額の経常黒字を不当に獲得していると批判した。トランプ政権は米国の経常赤字解消を主要な政策課題に掲げており、ドイツに矛先を向けた格好だ。
これに対し独政府は◇ドイツの経常黒字は企業の競争力が高いためだ◇ユーロ安でドイツ製品の競争力が一段と高くなっているものの、ユーロ安の原因となっている欧州中央銀行(ECB)の金融政策にドイツが介入することはできない――と反論している。
ただ、巨額の経常黒字を計上し続けることは外交上、難しいと考えており、連邦経済省は打開策を検討している。『フランクフルター・アルゲマイネ』紙によると、同省は企業の国内投資促進策や賃金政策のほか、VAT税率を引き下げた場合の効果を試算した。ただ、個人消費に占める輸入製品の割合は約25%にとどまることから、同税率を引き下げても効果は限定的という結論に至ったという。
一方、著名な経済学者であるカール・クリスティアン・フォン・ヴァイツゼッカー氏(ケルン大学名誉教授)は日曜版ヴェルト紙に、ドイツが経常黒字を圧縮しなければ、他のユーロ加盟国の財政赤字が一段と膨らみ、ユーロ加盟国が超国家的な債券を共同発行する「ユーロ圏共同債」構想が現実味を帯びてくると指摘。VAT税率の引き下げで経常黒字が減少すればそうしたリスクを回避できるとの見方を示した。現在19%の同税率をまずは14%に引き下げることを提唱している。