欧州連合(EU)の欧州委員会は9日、米製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)がスイスのバイオ医薬品大手アクテリオン・ファーマシューティカルズを買収する計画を承認したと発表した。両社の事業が重複する不眠症治療薬の開発に悪影響が及ばないよう、J&Jが提示した改善策を確実に実行することが承認の条件となる。
欧州委は買収計画の審査で、不眠症の分野で両社が新規の行動メカニズムに基づいた治療薬の開発を進めているため、競合関係にある両社の合併が実現すると、同分野でJ&Jの支配力が強まって競争が阻害され、開発のペースが鈍るなどの弊害が生じる可能性があると結論づけた。
J&Jは欧州委の懸念に対応するため、アクテリオンの研究・開発部門を分離して設立する新会社「イドルシア(Idorsia)」
の戦略決定に自社の影響力が及ばないようにするための改善策を提示した。具体的には◇イドルシアに対するJ&Jの出資比率を10%以下に抑え(J&Jが筆頭株主にならないことを条件に、将来的に最大16%まで引き上げ可能)、取締役も派遣しない◇J&Jと不眠症治療薬を共同開発しているミネルバ・ニューロサイエンスに対し、新たに世界規模で開発を進める権利を付与すると共に、欧州市場での売り上げに対してミネルバから特許使用料を徴収する権利を放棄する――の2点を提案。欧州委はこれらの措置によりJ&Jとアクテリオンの統合後も不眠症治療薬の分野で競争が維持され、革新的な製品の開発が推進されると判断した。