BMWがダイムラーとの協力協議を凍結か、カルテル通報で不信感

高級車大手のBMWが競合ダイムラーとの新たな協力に向けた協議を凍結するもようだ。両社を含む独自動車5社が長年、カルテルを結んでいたとされる問題で、ダイムラーが数年前に当局に通報していたとの観測が浮上しているためだ。両社は部品調達で協力関係にあることから、BMWは「信頼関係が大きく損なわれた」と感じているという。『南ドイツ新聞(SZ)』がBMWの社内情報として7月26日に報じた。両社は報道内容へのコメントを控えている。

BMW、ダイムラー、フォルクスワーゲン(VW)、アウディ、ポルシェの5社は1990年代から幅広い分野でカルテルを締結していたとみられる。この疑惑は21日付『シュピーゲル』誌の報道で浮上。当初は鉄鋼カルテルに絡んで立ち入り調査を受けたVWが押収された書類から5社のカルテルの存在が発覚することを恐れて2016年に通報し、当局が事実をつかんだとみられていた。

だが、SZ紙などのその後の取材で、最初に通報したのはダイムラーである可能性が濃厚になっている。それによると、ダイムラーは2014年の時点で欧州連合(EU)の欧州委員会に内部告発の形で通報していたもようだ。

背景にはカルテルを通報し調査にも協力した関与企業の制裁金を減免するEU独自のルールがある。特に最初に通報した企業は全額免除措置を受けることができるため、早期通報のメリットは大きい。

ダイムラーとBMWは2008年、部品の共同調達を開始した。コスト削減が狙いで、共同調達額は年50億ユーロに達し、コスト削減効果は1億ユーロのケタ台に上るとの観測もある。

共同調達の範囲を拡大すれば、コスト圧縮効果は一段と高まるものの、BMWはその実現に向けた協議を棚上げするもようだ。

電気自動車(EV)普及の前提となる充電スタンド網の構築に向けた協業についても取り組みが鈍化するとBMW内ではみられている。カーシェア事業の合弁化に向けた両社の協議も影響を受ける可能性がある。

ダイムラーは同カルテルに関する情報を一切、公表できない立場に置かれている。公表すると制裁金全額免除の“特権”を失う恐れがあるためだが、これがBMWの不信感を強める結果となっているもようだ。

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