ティッセン鉄鋼事業とタタの合併を外相がけん制

独ティッセンクルップが鉄鋼事業を印タタ製鉄と統合する方向で交渉していることをドイツのジグマール・ガブリエル外相(社会民主党=SPD)がけん制した。同外相は25日、鉄鋼各社の従業員代表や金属労組IGメタル幹部と会談。その後の記者会見で、タタ以外の企業との合併を検討するようティッセンクルップの経営陣に要求した。タタとの合併に対しては拠点の統廃合と人員削減を懸念する従業員とIGメタルが強く反対していることから、9月の連邦議会(下院)選挙に向けてポイントを稼ぐ狙いとみられる。

鉄鋼業界では世界的な供給過剰と安価な中国製品の大量輸出が響いて、各社の業績が悪化している。ティッセンクルップでは鉄鋼事業が財務の大きなリスク要因となっていることから、同事業をタタとの合弁に移管し連結対象から外したい考えだ。

鉄鋼事業の合弁化が実現した場合、工場と従業員の削減は避けられないとみられることから、従業員は強く抵抗。タタとの合併に対する対案として国内の鉄鋼会社が合併する「ドイツ鉄鋼株式会社」構想をIGメタルと共同で練り上げた。経済紙『ハンデルスブラット』によると、独鉄鋼大手ゲオルクスマリエンヒュッテのオーナーであるユルゲン・グロースマン氏はIGメタルと一部政治家の要請を受けて同構想の可能性を模索しているという。

ガブリエル外相はこの事情を踏まえ同構想を「考えられる可能性の1つだ」と明言した。国内の鉄鋼メーカーが合併しても拠点統廃合が避けられないとみられることに関しては「我々(政府)は支援できる。拠点を維持するための考えもいくつかある」と述べ、拠点の統廃合を伴うタタとの合併よりもメリットが大きいことを強調した。

ただ、ドイツ鉄鋼会社構想は実現の可能性が小さいとみられている。独鉄鋼2位のザルツギターが同構想に参加の意志がないことを明らかにしているうえ、ゲオルクスマリエンヒュッテは事業規模が小さく、ドイツの鉄鋼会社を束ねるには力量が不足しているためだ。

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