被用者の社内代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)は企業が行う職業教育(Betriebliche Berufsbildung)に対して共同決定権(Mitbestimmungsrecht)を持つ。これは事業所体制法(BetrVG)98条1項に定められたルールであり、雇用主は職業教育に関する決定を事業所委と共同で行わなければならない。では、具体的にはどこまでが職業教育の範囲に入るのだろうか。この問題をめぐる係争でラインラント・ファルツ州労働裁判所が3月の決定(訴訟番号:6 TaBV 21/16)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。
裁判は全国的にチェーン店を展開する小売店を相手取って同社T支店の事業所委員会が起こしたもの。同社はT支店で2015年6月、本来は店長ないし副店長の業務である売上検算を一般店員の業務へと変更した。さらに日々の閉店業務や顧客のクレーム対応も一般店員に任せようとした。
これに対し同支店の事業所委員会は、これらの業務を一般店員に委ねるためには職業教育を行わなければならないと主張。職業教育に関する共同決定を経営陣に要求したが、拒否されたため提訴した。
原告事業所委は一審で敗訴し、二審のラインラント・ファルツ州労裁でも裁判官の判断は覆らなかった。決定理由で同州労裁の裁判官は、職業教育とは知識や経験を伝えるものだと指摘。T支店の一般店員に委ねられた業務はそうした性質のものではないと言い渡した。雇用主は同支店の一般社員に新たな任務・責任を指示に過ぎないとしている。
最高裁の連邦労働裁判所(BAG)への上告は認めなかった。