欧州連合(EU)欧州委員会は14日、域外の企業による欧州企業の買収に対する審査を強化するための法案を発表した。ハイテク、インフラ、エネルギー、防衛など戦略的に重要な産業分野を対象に、買収の審査基準をEU域内で統一し、安全保障や治安に関わる技術や情報の流出を防ぐのが狙い。中国企業による欧州企業の買収が急増するなか、欧州委と加盟国が情報を共有し、意見交換しながら慎重に審査を進める。欧州議会とEU閣僚理事会の承認を経て、早期の新ルール導入を目指す。
EU内では中国家電大手の美的集団が昨年、ドイツの産業用ロボット大手クーカの買収を発表するなど、中国企業による買収が相次いでおり、技術流出を懸念する声が高まっている。ドイツ、フランス、イタリアなどは域外の企業による買収を規制するための具体策を検討するよう欧州委に求めており、ユンケル欧州委員長が13日に行った欧州議会での施政方針演説で、戦略的に重要な企業を標的とした買収への監視を強化する意向を表明した。
欧州委の提案によると、新システムではこれまで国ごとにばらつきがあった審査基準が統一され、欧州委と加盟国は安全保障や治安などの側面から域外企業による買収や資本参加を審査できるようになる。その際、域外企業にその国の政府が出資しているかどうかなど、第3国がどの程度関与しているかも見極める。
具体的にはまず、買収ターゲットとなった企業が拠点を置く加盟国が予備的な審査を行い、欧州委と他の加盟国に結果を報告。EU全体で情報を共有し、欧州委と他の加盟国が買収認可の可否について意見を伝えたうえで、標的となった企業が拠点を置く国が最終判断する。