電機大手のシーメンス(ミュンヘン)は9月26日、鉄道事業などからなるモビリティソリューション部門を仏鉄道車両・設備大手のアルストムと統合することで基本合意したと発表した。中国国営2社の合併で誕生した中国中車(CRRC)が世界ダントツの売上規模を持つことから、グローバル市場で対抗するためには欧州大手2社の統合が不可欠と判断し、合併を決めた。2018年末の合併手続き完了を見込む。
フランスで上場する新会社シーメンス・アルストムをパリないしその近郊に設立する。シーメンスは50%強を出資して経営権を掌握。11人からなる取締役会に同会会長を含む6人を派遣する。残り5人のうち4人はシーメンスとアルストム以外の人材が就任し、アルストムのアンリ・プパールラファルジュ最高経営責任者(CEO)は新会社のCEOとして取締役会に参加する。
新会社では鉄道車両事業の統括拠点をパリ圏、鉄道設備を含むモビリティソリューション事業の統括拠点を独ベルリンに設置する。
シーメンスは欧州域外では中国、米国、ロシア市場に強く、アルストムは中東、アフリカ、インド、中南米に強い。また、合併後は製品開発の共同化や車両プラットフォームの統廃合も実施することから、取引完了後4年目には年4億7,000万ユーロのシナジー効果を見込む。
シーメンスのモビリティソリューション部門の2016年の売上高は80億ユーロ、アルストムは同73億ユーロで、計153億ユーロとなる。営業利益(EBIT、調整済み)は同12億ユーロで、売上高営業利益率は8.0%。新会社では売上高を年4%以上のスピードで拡大し、23年には200億ユーロ以上に拡大する計画だ。売上高営業利益率も11~14%に改善するとしている。
シーメンスとアルストムはそれぞれICE、TGVを持ち、欧州の高速鉄道市場を分け合っている。また、英国の信号システムと独ローカル線車両・トラム市場で合わせて約50%のシェアを持つ。このため独禁審査で事業の放出など厳しい条件を付けられる可能性が高いものの、アルストムのプパールラファルジュCEOは解決策を見つけることができると断言。シーメンスのジョー・ケーザー社長は独禁審査を行う欧州連合(EU)の欧州委員会に対し、審査に際しては欧州市場だけでなく世界市場全体を見渡したうえで判断を下さなければならないと注文を付けた。
中国南車集団と中国北車集団の合併で2015年に設立されたCRRCは売上高が305億ユーロで、世界2位となるシーメンス・アルストムの2倍に上る。CRRCは外資との合弁を通して吸収した技術やノウハウをもとに独自の高速鉄道を開発し、世界市場で低価格の販売攻勢をかけていることから、こうした事情への配慮を欧州委に求めている。
シーメンスは最近、事業の合弁化を進めており、風力発電設備分野でシーメンス・ガメサ、電気駆動車の駆動系部品分野でヴァレオ・シーメンスを設立した。医療機器部門ヘルシニアーズの新規株式公開(IPO)も計画しており、持ち株会社化の方向に進んでいる。