欧州連合(EU)の欧州委員会は11日、電気自動車(EV)用電池の生産でアジア勢に対抗するため、関連分野の企業が参加する汎欧州企業連合を創設する構想を打ち出した。米ボーイングに対抗するため仏独英スペインの航空機メーカーが共同で立ち上げたエアバスをモデルに、EV用電池の分野で高い技術力を持つコンソーシアムの結成を目指す。
「EV電池版エアバス」の設立計画は、欧州委が同日ブリュッセルで開いた会合で、同委のシェフチョビッチ副委員長(エネルギー同盟担当)が発表した。会合には独ダイムラーや仏ルノーなどの大手自動車メーカーのほか、仏エネルギー大手トタル、独電機大手シーメンスなどの幹部が出席した。
欧州では温暖化対策の一環として、フランスや英国が2040年以降、ガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する方針を固め、独フォルクスワーゲン(VW)やダイムラーなどは相次いで2025年までにEVの車種ラインナップを大幅に拡大する計画を打ち出した。こうした動きを背景に、スイスの大手銀行UBSは欧州で5年以内にEVの販売台数がディーゼル車を上回ると予測している。
一方、米ゴールドマンサックスによると、EV用リチウムイオン電池の市場規模は25年までに世界全体で400億ドルに達する見通し。ただ、同市場ではパナソニック、韓国LG化学、サムスンSDIなど、日韓と中国メーカーが大部分のシェアを握っており、欧州ではようやくスタートアップ企業による生産が始まったばかりだ。
シェフチョビッチ氏はこのままアジア勢に依存した状態が続けばサプライチェーンの安全性、品質管理、コスト面などで欧州の関連産業は不利な立場に置かれると指摘。素材の調達やシステム統合、リサイクルなど、バッテリー生産に関わる幅広い企業の知見を結集し、早急に巻き返しを図る必要があると強調した。具体的にはサプライチェーン、研究開発、資金調達などの作業部会を立ち上げ、来年2月までに大量の電池を供給できる大規模工場の早期稼働に向けた行程表をまとめる。