年に6週間以上、病気休業する被用者がいる場合、雇用主はどうすれば職場に復帰できるかを従業員の代表である事業所委員会(Betriebsrat)などと共同で検討しなければならない。これは第Ⅸ社会法典(SGBⅨ)84条2項に記されたルールで、「職場復帰マネジメント(Betriebliches Eingliederungsmanagement=BEM=)」と呼ばれる。このルールに絡んだ係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が18日の判決(訴訟番号:10 AZR 47/17)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。
裁判はシフト勤務を採用する被告企業で機械工として勤務する社員が同社を相手取って起こしたもの。同社員は当初、早番(日勤)と遅番(夜勤)をともにこなしていたものの、05年以降は専ら遅番で働くようになった。
同社員は2013年と14年にそれぞれ35日、病気休業した。また、14年12月2日から15年2月26日にかけては依存症治療のために仕事を休んだ。
同社員は病休開けの3月25日、上司との間で病気の原因を究明するための面接(Krankenrueckkehrgespraech)を持った。この面接はBEMの一環という位置づけではなかった。
被告企業は同面接後、原告を夜勤だけでなく日勤にも投入することを決定した。これに対し原告は、同決定は事前にBEMが行われていないことから無効だと主張。また、夜勤のみを行いたいという原告の希望を十分に考慮しないことは、労働契約や社内・労使協定、法律に特別な規定がない限り雇用主は被用者の勤務の内容、場所、時間を「公正な裁量(billiges Ermessen)」に従って決定するとした営業令(GewO)106条第1文の規定などに抵触すると訴えた。
被告はこれに対し、専ら夜勤のみを行うことは一般的に健康に良くないという観点から日勤も行わせることで健康状態が改善するかどうかを試すことが命令の狙いだと反論。また、夜勤で欠勤があると日勤に比べて代替要員の確保が難しいという事情も踏まえた措置だと強調した。
原告は2審で勝訴したものの、最終審のBAGは裁判を2審のバーデン・ヴュルテンベルク州労働裁判所に差し戻した。判決理由でBAGの裁判官はまず、BEMの実施は勤務の変更の前提にならないと指摘。BEMを経ずに日勤も行うように命じた被告の措置はSGBⅨ84条2項に抵触しないとの見解を示した。
一方、この命令が公正な裁量に基づいているかどうかの解明は、命令が有効か無効かを判断するうえで決定的に重要だと指摘。2審ではこの点について事実関係が十分に解明されていないことから、BAGは最終的な決定を下せないとして、バーデン・ヴュルテンベルク州労裁に審理のやり直しを命じた。