従業員数が通常的に5人以下の企業で働く被用者には解雇保護法(KSchG)の規定が一部の例外を除いて適用されない。これは解雇撤回訴訟に伴う経費が小規模企業の経営の大きな負担になることを考慮して採用されたルールであり、同法23条1項第2文に明記されている。同項第3文にはさらに、従業員数6~10人の企業で働く被用者であっても2004年1月1日以降に採用された者には、同法の規定が一部の例外を除いて適用されないと記されている。このルールに絡んだ係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が10月19日の判決(訴訟番号:8 AZR 845/15)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。
裁判は1987年から薬局に勤務していた職員が起こしたもの。同薬局の雇用主は原告を含む全被用者を2014年6月末付で解雇することを13年11月28日付けの文書で通告した。同薬局は小規模企業であるため、原告には解雇保護規定が適用されなかった。
同薬局は被用者全員を解雇した14年6月末以降も一部の被用者を再雇用し8月末まで営業を継続。9月1日付で事業を譲渡した。譲渡契約には新経営者が同薬局の被用者3人を継続雇用することが取り決められていた。
原告は継続雇用されなかったことを不服として同薬局の旧経営者と新経営者を相手取って再雇用を求める裁判を起こした。
原告は1審で敗訴し控訴した際、旧経営者を訴訟の対象から外した。
判決は2審のデュッセルドルフ州労働裁判所でも覆らず、最終審のBAGも原告敗訴を言い渡した。判決理由でBAGの裁判官は、KSchGの解雇保護規定が適用されない被用者には再雇用の請求権が原則としてないとの判断を示した。
原告は民法典(BGB)242条の信義義務も根拠に再雇用を要求していた。裁判官はこれについては、再雇用の要求先となり得るのは旧経営者だけだと指摘。原告は控訴の際に旧経営者を訴訟対象から外したことから、司法判断を示さないと言い渡した。