被用者の解約予告期間、長期化は認められるか

労働契約を被用者の側から解除する場合、契約解除日は月末か15日のどちらかとなり、いずれの場合もその4週間前までに通告しなければならない。これは民法典(BGB)622条1項で定められたルールである。

ただ、被用者の解約予告期間を4週間超とする取り決めを労働契約で結ぶことも認められている。その場合、被用者側の予告期間が雇用主側の予告期間よりも長いことは認められない(同条6項)。つまり、被用者の予告期間は雇用主と同じかそれよりも短くなければならない。

では、同条6項の規定に抵触しなければ、被用者の予告期間を極めて長く設定することが可能なのだろうか。この問題を巡る係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が10月26日の判決(訴訟番号:6 AZR 158/16)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。

裁判は勤務先の運送会社に対し労働契約の解除を通告した社員を相手取って同社が起こしたもの。同社員は2009年12月に採用され、当初は月給1,400ユーロで勤務していた。両者は2012年になって追加の労働契約を締結。月給を2,400ユーロへと大幅に引き上げるとともに、被用者と雇用主の契約解除予告期間をともに3年とすることを取り決めた。両者の予告期間は同じであり、BGB622条6項の規定に反していない。

同社ではパソコンに社員監視のプログラムがインストールされていることが14年に発覚した。これを受けて被告社員は15年1月末付の労働契約解除を14年12月27日付の文書で通告した。予告期間をBGB622条1項の規定に基づき4週間としたわけである。

これに対し原告の運送会社は、契約解除日は17年12月末になると主張。被告には同日まで契約を解除する権利がないとして提訴した。

2審のザクセン州労働裁判所は原告の訴えを棄却し、最終審のBAGも2審判決を支持した。判決理由でBAGの裁判官は、原告と被告の契約解除予告期間を3年とした12年の労働契約はBGB622条6項の規定に抵触していないとしながらも、普通契約約款(Allgemeine Geschaeftsbedingungen=AGB)の作成使用者(ここでは原告企業)が信義義務に反して契約相手(被告社員)に不利な取り決めを行った場合、その取り決めは無効となるとした民法典(BGB)307条1項第1文の規定を指摘。被告の解約予告期間を3年と極めて長く設定した取り決めは被告にとって著しく不利益であり、給与の大幅な引き上げを通しても相殺され得ないと言い渡した。

また、被用者の解約予告期間が4週間を大幅に上回る場合は、総合的な事情を勘案したうえで基本法(憲法)12条1項で保障された「職業・職場選択の自由」の観点から審査する必要があるとの判断も示した。

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