自動車大手の独ダイムラーは10日、電算センターの電源に燃料電池を用いるパイロットプロジェクトを企業向けコンピューター大手のヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)などと共同実施すると発表した。自動車分野で培ってきたノウハウを他の分野に転用し、市場を掘り起こす考えだ。
電算センターは大量の電力を消費する。例えば米国での同消費電力は2020年までに1,400億キロワット時(kW時)に拡大すると予想されている。これは発電所50カ所の発電量に相当し、二酸化炭素(CO2)排出量は約1億トンに達する。
ダイムラーなどは電算センターの電力を環境に優しい方法で生産することで、地球温暖化の緩和につなげる考えだ。具体的には燃料電池と電解槽、水素タンク、太陽光・風力発電設備からなるシステムを通して電力の安定供給を実現する。太陽光・風力発電を通して電算センターに電力を供給。供給量が需要を上回る場合は電解槽での電気分解に回し、水素を生産する。生産された水素はタンクに貯蔵される。太陽光・風力発電の電力供給量を需要が上回った場合は水素が燃料電池に投入され、追加の電力を供給する。これにより電算センターのCO2排出量が大幅に改善される。また、同システムを利用すると外部からの送電電力に依存する必要がなくなるため、非常用ディーゼル発電機や無停電電源装置(UPS)が不要となり、建設コストを圧縮できるメリットもある。
同プロジェクトはダイムラー、HPEおよび発電・給電ソリューション事業者のパワー・イノベーションズ(PI)が、再生可能エネルギーとエネルギー効率に関する研究開発を行う米国立再生可能エネルギー研究所 (NREL)の協力を受けて来年から実施する。HPEは燃料電池を用いた電力システムを、「HPE Apollo 6000 Gen10」「HPE SGI 8600」など同社のITソリューションに統合する考えだ。