従業員の社内代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)は必要な情報を従業員に適宜、提供する権利があり、情報伝達に必要な手段の提供を雇用主に要求できる。これは事業所体制法(BetrVG)40条2項に明記されたルールであり、パソコンとインターネットの利用については事業所委の権利がすでに確定している。では、黒板などの代わりに電子ボードを提供するように要求する権利もあるのだろうか。この問題をめぐる係争でフランクフルト州労働裁判所が3月の決定(訴訟番号:16 TaBV 176/16)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。
裁判はフランクフルト空港に拠点を置く物流企業の事業所委員会が同社を相手取って起こしたもの。事業所委には従業員への情報伝達の手段として黒板が1枚、掲示ケース1個がそれぞれ与えられていた。雇用主もこれとは別にそれぞれ黒板1枚、掲示ケース1個を利用していた。
同社のホール入り口には天気予報やスポーツニュースを提供したり訪問者に歓迎の言葉を示すための電子ボードが設置されていた。原告事業所委はこれを受けて、同委の活動用の黒板と掲示ケースを電子ボードに切り替えることを要求。これが拒否されたため、裁判を起こした。
1審のフランクフルト労働裁判所はこの訴えを棄却し、2審のフランクフルト州労裁も同様の判断を示した。決定理由で同州労裁の裁判官は、個々のケースでは電子ボードが必要となることもあり得るものの、原告の場合はパソコンで作成した文書を印刷して黒板と掲示ケースに張り付ければ事足りると指摘。電子ボードを利用しなければならない理由はないとの判断を言い渡した。最高裁の連邦労働裁判所(BAG)への異議申し立ては認めなかった。