スイス食品大手のネスレは米国チョコレート菓子事業の売却契約を今年第1四半期中に締結する見通しだ。ブルームバーグ通信の問い合わせを受けて広報担当者が明らかにしたもので、売却手続きは順調に進んでいるという。売却価格は最大30億ドルと見込まれており、昨年1月に就任したウルフ・シュナイダー最高経営責任者(CEO)の下で実施する初の大型売却となる見通しだ。
ネスレは昨年6月、成長が鈍化している米国の菓子事業について、撤退に向けて検討を進めていることを明らかにした。健康関連などの有望分野に経営資源を集中する戦略の一環。事業売却も視野に複数の「戦略オプション」を精査し、年内に結論を出すと説明していた。
ネスレは米国で「クランチ」「バターフィンガー」「ベビールース」などのブランドを展開している。2016年の売上高は9億スイスフラン(約1,020億円)で、米国事業における売上比率は3%程度。また、世界の菓子事業とグループ全体の売上高に占める割合はそれぞれ10%、1%にとどまる。
ネスレは消費者の嗜好や食習慣の変化に対応するため、高い成長が見込める栄養食品など健康関連分野で積極経営を展開する一方、需要が伸び悩んでいる冷凍食品などの分野で事業売却やブランドの統廃合を進めている。米国のチョコ菓子市場は長期低迷が予想されることから撤退する。米菓子大手ハーシーが売却先候補の1社と目されている。